神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜
俺は最初、てっきり。

俺がいない間に、ベリクリーデがその…ホスト的なものにハマって。

男版美人局みたいなことをして、良いように金を騙し取られてるんじゃないか、って。

そう思ったのだ。

ほら、だって以前もベリクリーデは、宗教勧誘に騙されて、ツボを買わされてただろ?

あれと同じ。

人を疑うってことをしないんだから。このお人好しベリクリーデちゃんは。

…しかし。

今回は…この、クロティルダという男は。

それ以上に、厄介なモノだと判断した。

どんな魔法を使ったのか知らないが、この男は、俺がかつて、別の世界で『オプスキュリテ』という組織の頭目だったことを知っている。

ベリクリーデでさえ知らないことを。

つまり、それを知ることが出来る立場にある、ということだ。

絶対厄介なものに違いない。

俺達を、信じられないくらい大きなトラブルに巻き込むような、特大級の厄介者だ。

こんな厄介者には、出来るだけ関わらない方が良い。

それなのに、クロティルダという男は。

「そんなに警戒する必要はない」

とか抜かしていた。

誰が俺をこんなに警戒させてる原因だと思ってるんだよ?

それに。

「大丈夫だよ、ジュリス。クロティルダは良い人だよ」

「…ベリクリーデ…」

…お前まで。

良いように騙されてる…としか思えないが。

でも、ベリクリーデは、普段は鈍いように見えて。

直感だけは、非常に頼りになる。

そのベリクリーデが「大丈夫」と言うのなら、本当に大丈夫…。

…いや、俺はそんなことじゃ心を許さないぞ。

「お前、何なんだ?人間か?魔導師か?魔物か?」

俺は、相変わらず杖を向けたまま尋ねた。

まずは身分を明らかにしてもらおうか。

すると。

「俺は天使だ」

と、クロティルダは答えた。

…は?

その時の俺は、相当間抜けな顔をしていたに違いない。

「智天使ケルビムに仕える"大天使アークエンジェル"第7位。『裁定者』のサンダルフォン」

「さ…ん…。…は?」

「我が主である智天使ケルビムより賜りし名は、クロティルダと言う」

…思った以上に素直に、しかも丁寧に自己紹介してくれた。

でも、何だろう。

説明してくれてるはずなのに、頭の理解が追いつかない。

おまけに、ベリクリーデが追い討ちをかけるように。

「私の、昔の大好きな人なんだよ」

とか言うものだから。

「はぁっ…!?」

余計に、頭の中が大混乱。

…俺、一体どうしたら良いんだ?
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