尚美~最後のレディース
「これで出る」
真弓はそう言って、ガレージの中に在る、父親の単車のシートに手を置いた。
「オジさんのフォア?」
「おう」
CB400F。
通称、4フォア。
真紅の純正タンクと、独特な形のシートやテールは、今も名車と語り継がれ、不良だけではなく、走り屋や一般人からも圧倒的な支持を受ける人気車。
「…やめろって。
そんな名車こかしてタンクでもヘコませたら、オジさん泣くぞ」
「大丈夫、運転するの尚美だから」
「はあ!?」
「だって私、運転出来ないもん。
尚美そっちのモンキー乗れたじゃん」
真弓はそう言って、原付免許でも乗れる、50CCのギア付きのバイクを指差した。
「…モンキーとフォアじゃ重さが違うだろ」
「慣れろ」
「慣れるまでに傷つけちまうって…」
「大丈夫だって、ちょっと位。
父ちゃん尚美の事愛してるから」
「……。」
真弓はそう言ってスタスタと家へ歩いていき、私も溜め息を吐いて後を追った。