クールな身代わり王女は、騎士の熱愛に気づけない
 セイラの部屋の扉をノックすると、少し元気のないセイラが顔を出した。まだ、完全に体調はよくなっていないようである。しかしセイラは、いつもの元気を取り戻そうとするように、笑顔でノキアを迎える。

「どうしたの、ノキア?」
「二人で、話がしたいと思った」
 無理に笑顔を作らずともよい、とノキアは胸が痛んだが、黙っておいた。

「お別れ前の、挨拶?」
「そういうつもりではないのだが、その……すまなかった」
 数日もの間、意識不明の重態という事態に陥り、ノキアはそのことで自分を責め、悔いていた。

「どうしてあやまるの?」
「おまえを無事に帰してやれなくて……守りきれなかった」
「ノキアは、わたしを守ってくれたわ。そうでなければ、わたしは今ここに立っていないもの」
「しかし」
 ノキアは納得できずに否定の言葉を発したが、それを遮るように、セイラが口を開いた。
「ありがとう」
 セイラは、微笑を返していた。
 ノキアには、礼を言われる意味がわからなかった。
「わたしは、ノキアにたくさん助けてもらったもの。入れ替わってもらったり、自分の危険を顧みずに守ってもらったり。ノキアじゃなければできなかったことだわ」
「でも……」
「だめよ、そんなことを言っちゃ。ノキアは、もっと自信を持たなくちゃいけないわ」
 目を伏せるノキアの手を、セイラが取った。

「すまない……いや、ありがとう」
 ノキアが言うと、セイラは優しく笑った。
「わたしね、決めたことがあるんだ。それを、明日のパーティーで発表する。ノキアにも、きいてほしかったの」
「決めたこととは、なんだ?」
「明日のお楽しみ。びっくりさせたいの」
 セイラは、意味ありげにウィンクした。
「では、明日を楽しみにするとしよう」
「あら? 追求しないんだ?」
「その様子では、教えてもらえそうもないからな」
「うふふっ、ばれちゃってるのね」
「なんとなく、そんな気がしたんだ」
 ノキアは、肩をすくめて笑った。お互いのことがなんとなくわかってしまうのは、やはり容姿が似ているからだろうか。
 二人は、語り合いながら長い夜を過ごした。
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