メガネを外したその先に
「あー…もう離れろ、こっち来い」


周りの生徒たちの視線を気にしている先生が、私の手を引き剥がして歩き出す。

こうなる展開は想定の範囲内で、それを見越してわざわざ学校の前までやってきた私は狡いことをしている自覚がある。


でも、そうでもしないと時間を作ってもらえない。

授業の質問をできなくなった立場で、久しぶりにゆっくりと眺められた先生の背中に仕舞い込んでいた気持ちが溢れ出す。


駅までの道のりとは反対方面にあるレトロな喫茶店で先生と向かい合う。

メニューを開きながら先生の様子を伺ってみたけれど、先生がメニューを見る気配はない。
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