メガネを外したその先に
お通しのきんぴらを摘み、お酒を口に含む。

画面を確認すれば、いつの間にかついていた“既読”。


「返信くらいしてよ」


個室で紡いだ言葉は、誰にも届くことはない。

空になったグラスを虚しく見つめながら、二杯目のお酒を頼んだ。


二杯目のグラスを半分くらい飲んだ頃、個室の扉が開いて龍弥先生が顔を出す。

諦め半分だった私は、目の前の状況を飲み込めずに瞬きを数回繰り返した。


「何だよ」

「いや、来てくれると思わなくて…」
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