最期の言霊
俺の奇跡的な病気の完治に伸也とヒカリは、泣いて喜んでくれた。
しかし、その次の日、伸也から「楓ちゃんが突然退職した!」とLINEが入った。
伸也のLINE内容から驚きはあったものの、やっぱり、という思っている自分がいた。
病気は完治したが、まだ体力が戻っていない俺は、スマホを持つ力すらなくなっていた。
今すぐにでも楓に連絡を取りたいのに。
俺は体力を戻すために入院を続け、2月の初め頃には退院することが出来た。
会社からは退院後、1週間だけ休みを貰い、その間に俺は楓を探した。
まずLINEはしたが既読にならない。
電話をかけても繋がらずアナウンスが流れた。
楓の自宅にも行ったが、既に引き払われていて居なかった。
今まで一緒に行った神社を回ってみても、楓の姿はどこにもなかった。
そうこうしている内にあっという間に1週間が経ち、俺は約半年ぶりに会社に出勤をした。
楓が使っていたデスクの方を見てみたが、当然彼女の姿はなかった。
しかし、仕事中に楓が居ないと分かっていても、何度も楓が座っていたところを見てしまう自分がいた。
季節が流れるのは早く、桜の咲く季節になった。
休みの日に桜並木がある河川敷を、俺は一人で歩いていた。
どこに居ても楓の姿を探してしまう。
満開の桜を見上げ、俺は「楓、桜見れたよ。ありがとう。」と言った。
すると、優しい風が吹き、俺の近くに1匹のモンシロチョウが飛んできた。
そして、俺の回りを飛び続けるので手を出してみると、モンシロチョウは俺の人差し指に止まった。
すると、最後の日に楓が言っていた「わたしの分まで生きてね。」という言葉を思い出した。
モンシロチョウは、まるで俺に「前向きに。」と言いに来ている楓のように見えた。
そうだよなぁ、前向きに生きないと、楓に怒られちゃうな。
そして、俺は楓に誓った。
「楓、、、俺、前向きに頑張るね。幸せになるね。」
俺がそう言うと、モンシロチョウは俺の指から飛び立ち、空高くまで飛んで行ったのだった。
―END―