『世界一の物語』 ~人生を成功に導くサクセス・ファンタジー~
 その声がフランソワの耳に届いた。
 すると、薄れゆく意識の中に呂嗚流の顔が浮かんできた。
 彼は富裸豚と同じことを言っていた。
「諦めるな!」
 あぁ、呂嗚流様……、
 フランソワは彼に救いを求めた。
 しかし、ふ~っと気が遠くなり、彼の顔がぼやけてきた。
 あ~、もうダメ。
 呂嗚流様、僕は弱い犬でした。
 お許しください。
「ダメだ。諦めるな! 死ぬ気で頑張れ!」
「でも、もうほとんど死んでいます」
「バカヤロー、お前は世界一の名犬なんだろ。弱音を吐いてどうする!」
 呂嗚流の檄が飛んだ瞬間、ぼんやりと影が浮かんだ。
 誰だろう? 
 遠ざかる意識の中で、その影を見極めようとした。
 すると、その影に光が当たった。
 あっ、椙子様だ。
 間違いなく椙子様だった。
 輝くような笑みを浮かべていた。
 すると、弱気の虫がどこかに逃げていった。
 死んでたまるか! 
 椙子様に会うまでは絶対に死ねないんだ。
 力を得たフランソワは、最後の力を振り絞って生き残った1パーセントの細胞に喝を入れた。
 こんな毒に負けてたまるか! 
 僕は、この僕は、名犬フランソワだ!
 すると、細胞が分裂を始めた。
 1パーセントが2パーセントに、そして、3パーセントにと、ゆっくりとではあるが、正常細胞が増えていった。
 更に、それを加速させるかのように脳内で見守る椙子様が鞭を振るった。
「分裂しなかったらお仕置きよ!」
 鬼のような形相でフランソワの細胞を叱咤激励し続けた。
 すると、恐れをなした正常細胞が我先にと分裂を始め、黒紫色(こくししょく)だった体が徐々に淡い藤色になり、それが元の白色へと変化を始めた。
 
 
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