血管交換シヨ?
「ツキくん」

「んー?」

「スズが彼女だったら堂々としてられるのにね」

「スズが?」

「なんでもない」

心が欠けたままでも、
誰かから見たツキくんの何かが欠けたままでも、
スズはそれでもよかった。

欠けた部分を補えるほどの力がスズにあるとは思えない。

それでもそばに居たいと思う。
どんなカタチでも、関係性でも。

ツキくんが許し続けてくれる限り、ずっと。

「ツキくん?」

「なぁに」

「早く血管交換しよ」

「それ、ずっと言ってるね」

「早くツキくんの一部になりたいんだもん」

「積極的だねぇ」

「ツキくんはさぁ、」

「うん」

「周りから見たら変わってるかもしれないじゃん?美桜ちゃんがその…受け入れられなかったみたいに」

「そうかもねぇ」

「それでも良くない?」

「いいの?」

「うん。ツキくんのどこかが欠けたままでも、スズはいいよ。欠けたままでもいいでしょ。箔が付くじゃん」

「大文豪になった暁には?作家として語られる時には色が付いていいかもなぁー…って、すげぇ小物感」

「そうかも。ちょっとダサくていい感じ」

言い過ぎだよって言いながら
ツキくんがスズの髪の毛をぐしゃぐしゃってした。

冷房のせいなのか、素肌がちょっとだけ冷たくなってしまっているツキくんが
一秒、一秒ごとに生きている人間なんだって実感して
何故だか泣きそうになってくる。

欠けたままでも、ボロボロでもいいから
ずっとここに居て。

それしか望まないスズの願いを
どうか受け入れて。

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