悪事通報アプリ
「そうだよね?」
でも、誰に?
焦ってしまった思考回路がうまく働かない。

こんなことが起きるなんて信じられなくて、誰の顔も浮かんでこない。
「ねぇ、雄馬はどう?」
「え、雄馬?」

「うん。だって夢奈はあいつに殴られてるんだよ?」
そう言われて私は自分の右頬を押さえた。

もう腫れもすっかり消えているけれど、あのとき殴られた痛みを忘れたわけではない。
心に刻み付いた痛みはきっと何年後にも、私を蝕んで苦しめるはずだ。

そうなる前に復讐するのはありかもしれない。
「雄馬か。そうだね。それがいいかも」

暴力で人を押さえつける人間には、暴力で返してもいいはずだ。
私はゴクリと唾を飲み込んでスマホ画面をスクロールした。

すぐに雄馬の名前を見つけて手を止める。
だけど雄馬の名前をタップするときにはさすがに躊躇して指先が震えた。

まるで、一番最初にこのアプリを使ったときのような怯えや恐怖が蘇ってくる。
「早く選択しなきゃ。じゃなきゃ夢奈が……!」
「わかってる!」
< 109 / 170 >

この作品をシェア

pagetop