君が愛おしくて。クールなエリートSPの甘く一途な溺愛事情
階段を上がって一番奥。今井と書かれた表札がある部屋の前で足を止める。
家に帰ることは事前に連絡している。
ドクッ……ドクッ、ドクッ……
心臓が速まるのを感じる。
いつもみたいに、何かにときめくような感じではなく、勇気を出してしようとしていることに、怖さが付き纏ってくる感じだ。
気持ちを落ち着かせようと、服の上から片手を置き撫でてみる。
「ふうー……」
軽く息を吐く。
それでも、乱れた鼓動は落ち着かない。
すると。
もう片方の手を、ぎゅっと握られる。
(……要くん)
握られた手から、そこ知れぬパワーを感じだ。
見上げた先、見えた彼の力強い眼差しが、とても頼しかった。
(大丈夫……)
深呼吸をして、呼び鈴を鳴らす。
__ブーブー。
呼び鈴の音も、変わらないままだ。
少しして、部屋の中から微かな足音が聞こえた。
ドアが開き、年配の男性が出てくる。
「……久しぶり……お父さん」
「……」
お父さんはしばらくの間、私を見据えると、大雑把に視線を逸らした。
上下グレーの部屋着に無精髭。白髪混じりの黒髪。
久しぶりに会ったお父さんは、想像していた姿よりも老け込んで見えた。
「はじめまして、郡司要と申します。本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます」
要くんが丁寧に腰を折り曲げ挨拶をすると、お父さんの視線は要くんに向けられた。
「宜しければこちらどうぞ」
「……」
要くんが手見上げを渡すと、お父さんは無言で受け取り、部屋の奥へ消えていく。
(えっ……ちょ……お父さん)
「お邪魔いたします」
戸惑う私をよそに、要くんは靴を脱いで部屋に入る。
私は慌てながら靴を脱いだ。
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