偽りの世界

「ただ・・・いま」

少しためらって

扉を開けると

玄関には

いつもいないはずの母がいた

出迎えなんて珍しいから

思わず声もためらってしまった

「何して・・・」

「もう、嫌、貴方」

何を言ってるか

聴こえなかった

でも

手に持っているのを見て

扉を思いっきり閉める

「嫌っ」



母の手には

強く握り締められている

―――包丁があった


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