エリートなあなた
その10メートル先には腕を組み鋭い目つきで立つ、まさに渦中の絵美さんの姿。
さらに隣で“ごめん”のジェスチャーをしている、松岡さんの2人を捉えた。
そして近づいて来る2人に、手を外した課長との距離を少し取って構えたのに。
「真帆ちゃんおめでとう!」と、今度は高らかな声を上げた絵美さん。
「ほんとにねー。隣で見ててジレったくてさぁ」
「アンタが余計なことするから拗れたんでしょ!」
目の前で色々と言われた挙句、やれやれといった顔で見られると切ないものがある。
「――で、しっかり画策して下さったというわけか、」
「勘違いし合ってるから、これは誰かがほどいてあげないとってね?」
「…よく言うよ」
「えー、優しい後輩なのにぃ」
溜め息を吐いた課長の肩をポンポン、と叩く松岡さん。その表情からは楽しんでいる、と見受けられた。