エリートなあなた


彼女のマンションから自宅へ帰って来たのは、夕食を食べてからのことだった。



そのままバスルームへ向かうと、バスタブへと身を沈ませると天井を仰ぎ見た…。


 * * *



「真帆、…話があるんだけど」


「ん、…なぁに?」


目の前の乱れた課長の髪が額へかかると、幼く見えるんだと知った初めての夜のこと。



課長との幸せなひとときから覚めて、その余韻に身体がまだ痺れていた時。



腕枕をしてくれた彼の腕を抜け出し、素肌のまま向かい合った私たち。



「…俺たちのことは会社に知られたらいけないんだ」


「え… どうして?」


すると彼が紡いだ言葉の意味が分からず、この時点では首を傾げるばかり。



だけれど、それは“付き合っていることが公に出来ない”ことを示していた。



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