エリートなあなた


早く終わってしまった方が良い。それがつい、素っ気ない言い方を呼び寄せていた。


すると早くも飲み終えた彼がゴミ箱へカップを捨てる。私も続いてカップの残りを空けた。


どうにか飲み終えたコーヒーの容器を捨てると、親切にも彼はまだ待っていてくれた。


「うーん、吉川さんに一番大事なことを伝えてないし戻れないんだ。
さっきお邪魔したのも、実は吉川さんに話があったからね」


課長が私に伝えたい大事なことがある…?


言葉の意味が理解出来ず、つい首を傾げる私に微笑んだ彼。その表情が綺麗でドキドキするのは、もう不可抗力にして欲しい…。


そして給湯室を出た課長の指示で、ひとまず隣接する秘書課へと立ち寄った。


それは彼に言われたとおり、「専務秘書室を暫く留守にします」と秘書室の先輩へ告げるため。


「申し訳ないけど、吉川さんに少し手伝って貰いたい件があるから」


“どういうこと?”と不審がることもなく、ふたつ返事で彼女たちからOKが出たのは課長の援護のお陰だとひっそり感謝した。


それこそが本当に、人生を一変させるとびきりのサプライズだとは、この時の私が知る由もなく――


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