エリートなあなた
空回り


そのお陰で、頑丈なドアの前に立つ頃には、顔のこわばりも取れていた。



――緊張していたこと、…松岡さんは分かっていたんだ。



真新しいセキュリティ·カードを使って、異動前にカンペキに覚えたセキュリティの解き方。



操作を終えて最後に指紋チェックを行なうと、ピピピッ!と電子音が鳴った。これですべての解錠が完了する。



松岡さんとはそこで一旦お別れ。試作部のドアを開けて、騒がしさが包んでいる部署内へ1人入った。



予め指示されていた通り、幾つもの課が存在する中を通り抜けて目指す先。



それはこの度、部署内に新設された“構造課”だ。出入口から最も遠い課へ静かに到着する私。



そして対面式に設置されたデスクから少し離れた位置にある、ひとつの大きなデスクまで小走りで向かった。



< 74 / 367 >

この作品をシェア

pagetop