無愛想な天才外科医と最高難度の身代わり婚~甘く豹変した旦那様に捕まりました~【職業男子×溺愛大逆転シリーズ】
 ソファに座った真紘が、不思議そうに目を瞬かせて由惟を見上げている。
 
「突然どうした?」

 真紘がポンポンと自分の隣を叩くので、由惟もマグカップを持って彼の隣に腰掛けた。「成澤さん、言ってましたよね。この結婚は、成澤さんが院長になるために必要だからだって。最初にそれを聞いて、すごい嫌な人だなって思ったんですけど」

 隣でブハッと吹き出す音が聞こえた。振り向くと、真紘が口元に手を当て肩を震わせながら笑いを堪えている。

「相変わらず歯に衣着せぬ物言いだな」
「……すみません」
「穂乃花のそういうところは嫌いじゃない」

 気にするなと言わんばかりに頭を撫でられた。優しい手つきにキュンとしていると「で?」と先を促され、由惟は話を続けることにした。

「……けど、この前の患者さんを全力で助けようとする成澤さんを見ていたら、ただ出世したいだけとは思えなくて……」
 
 権力に固執するような人間が、あんな風に汗を流しながら目の前の患者を懸命に救おうとするだろうか。

「もしかして、院長にならなきゃいけない理由があるんじゃないですか?あれからずっとそう思っていて。その理由を知りたいんです」

 彼の心が知りたかった。好きだから、余すところなく彼を知りたい。
 強欲な恋心に任せて訊ねると、真紘は物思いに耽るように前屈みになった。

「……生田目病院の経営状態があまり良くないことは聞いてるか?」

 由惟はフルフルと首を振った。初耳だ。

「近くにデカい救命救急センターがあって、ただでさえ患者が集まりにくいっていうのに加えて、例の感染症があったからな。一気に赤字がかさんで、それ以降経営は逼迫している。それで赤字脱却のために呼ばれたのが俺だ。救急から患者を獲得していくために、脳神経外科の体制を整える必要があったからな。それに俺はメディア露出もしてたから、客寄せパンダの意味合いもある。でも、生田目病院には恩があったから、断る理由はなかった」
「恩、ですか?」
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