(一)この世界ごと愛したい




ほっと一息。



これでまだ目的地にも着いてないんだよね。


私がまたこの旅行の幸先を案じていた時、脱衣所のドアが開かれる。





「え…。」


「もう無理。」




まだ着替えてないのに遠慮なしに入ってきたるう。


そんなるうが無理だと言って、私の唇をやや強引に奪って行く。




…情緒どうなってんの!?!?






「るっ…!」



思いっきり抵抗するも、るうは止まらない。




「ん…っ!?」



まるで野生の獣が、ただ獲物に喰らい付くように。



止まらないどころか、私の身体に巻いたタオルに手を掛けようとるうが動くのが分かる。




一体、何を考えているの。





「リン…。」



唇を離したるうが、私を呼ぶ。


呼ばれても、この状況も格好も恥ずかしいことこの上ないし、返事が出来るほど息も整っていない。





だけど、逃げないと食べられてしまう。


人間の野生的本能が私を動かす。






「っ…ごめん!!!」



私は力一杯るうを押し退け、着替えをしっかり手に握ったまま脱衣所を飛び出す。



恐らく寝室だろう部屋に逃げ込み、ラッキーなことに鍵がついていたので迷わず鍵を掛けた。





「はぁっ…。」



もう肩があがるし。顔はまだ熱いし。




さっきも思ったけどまだ初日だよね!?


目的地にも着いてないんだよね!?





「どうなってんのー…。」




私はもう、それはそれはすぐに着替えて。


自分の安全を第一に考えて。



もう、油断しない!ミスもしない!自分の身は自分で守ると心に誓います!!!





用意された綺麗にメイキングされた大きなベッドに、私は身を委ねて。


それでも、しばらくるうのことが頭から離れなくて。



さっきの感情を爆発させたようなキスも、私の名前を呼ぶ色っぽい声も。



まだ鮮明に残っているけど。





「……。」




人間横になると眠たくなる生き物で。


私はこの鍵のかかった部屋の中で、一人で眠ってしまった。





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