(一)この世界ごと愛したい
「強いて言うなら、馬鹿みたいに正義感強いとことか?」
「馬鹿って…。求めてないから言わなくていいよ。なんか逆に怒られてる気分。」
「良くも悪くもだからな。」
「…正義感ねー。結局のところ正義なんて、勝者だけの都合の良い話で。立場が逆ならいい迷惑でしかないよねー。」
私の捻くれて凝り固まった頭には、そんな考えにしか至らないけれども。
『俺にとってはリンだけが正義だよ。』
それでもレンはそんなこと言ってくれたなと、何故か今ふとそんなことを思い出した。
「その逆の立場のことまで考えてんのが馬鹿が付く理由なんだよ。」
「…簡単に割り切れたら、確かに楽だろうね。」
「それだとリンじゃねえよな。俺はそういうとこにも惚れてんのが事実だし。」
「もうわかったから!言わなくていいって!」
私は思わず照れてしまい。
赤くなってる気がする顔を隠すべくるうから顔を背ける。
「…。(あー可愛い。)」
「…変人め。」
「ああ?」
「何でもないでーす。」
そのまま馬車は走り続けて。
途中美味しそうな匂いがして、外を見るとお茶屋さんがあったので御者さんも交えてお茶とお茶菓子をいただいた。
そんなことをしていて、気が付けば夕刻。
「…そろそろか?」
「着いた!?」
馬車の足が、ピタリと止まった。
御者さんが呼びにくるよりも早く、私は外に飛び出した。