ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
第1章 ブラン家

婚約者の裏切り


「以前からこうなる予感はあったのよね」


ルイーズは幼い頃から婚約者を大切に思ってきた。そこに男女の情はなかったが、将来の伴侶として自分なりに尽くしてきた。しかし、婚約者からは姉のように思われていることにも気づいていた。

 ルイーズが見つめる先では、婚約者が可愛い女性と手をつなぎながら庭園を散策している。見つめ合いながら、はにかむ姿はなんとも初々しい。

 ピンクのバラを背景に見つめ合う恋人たち——。あそこにいるのが婚約者でなければ、そんな風に見えていただろう。

 婚約者はルイーズの存在に全く気づいていないようだ。

 ルイーズの様子に気づいたエリーはその視線の先を辿った。するとそこには、親友の婚約者が他の女性と逢引をしている。

 エリーは呆然とするルイーズを支えながら、急いでカフェに移動した。




 今日は庭園内に併設されている話題のカフェにやってきた。そこで先ほどの光景を目にしてしまった。

「あの男性は、ルイーズ婚約者よね?」
「——うん、そうね」


 長い沈黙が続く中、エリーは運ばれてきたハーブティーをルイーズの前に差し出した。

 それを口に含んだルイーズは、少しだけ生気を取り戻したようだ。そして、顔をあげると何事もなかったかのように話し始めた。

 こんな状況でも、取り乱さない姿はさすがである。


「このハーブティー美味しい。ほんのりレモンの香りがするけど、なんていうハーブかしら」

「それはレモンバームよ。心を落ち着かせてくれるわ。ハチミツを少し入れても美味しいわよ」

 二人は、店主が出してくれたジンジャークッキーを味わいながら、ハーブティーの香りを楽しんだ。


「本当に美味しい。なんだかほっとするし、頭がスッキリしてきたわ」

 ルイーズは、何かを決心したような面持ちでエリーを見つめた。

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