海よりも深くて波よりも透明
「2人一緒だったのか? 仲良いな」

「あ、そうなの。実はあたしたち…」



穂風が言おうとしたそのとき、嫌な予感的中…。



「おー、夏葉。この前マッチングしたやつどうなった?」



穂風の言葉を遮って、空気の読めないこの男…。



「ヒロさん…」



穂風を見ると、「は?」という顔で俺を見てる。



いきなりやめてくれ…。



こええよ…。



「結構チャットいい感じだったもんな」



俺の気も知らず、ヒロさんがぐいぐいと聞いてくる。



まじやめてヒロさん…。



「ヒロさん、それどういうこと?」



穂風が聞いた。



聞くな聞くな…。



「先週こいつが俺に女紹介してって言うからアプリ教えてやったの」

「ふーん」

「そしたらこいつ顔良いから一瞬でマッチングしていきなり会う約束してさ~」

「へー」



穂風が怖い相づちを打ったそのとき、俺のスネに激痛…。



信じらんねえ…。



蹴りやがった…。



穂風は澄ました顔をしてる。



「ヒロさん、それいつの話?」

「会ったのは…先週の日曜か?」

「はあ!?」



穂風が俺の顔を見てにらんできた。



その目が「あたしと付き合う前日じゃん!」と言ってる…。



「ていうか穂風ちゃんはなんでそんな怒ってんの?」

「夏葉の彼女だからですけど!?」

「は!? まじ!?」



ヒロさんが驚きの声を上げたと同時に、その場にいたほぼ全員がこっちを見てきた。



みんな俺らのこと好きすぎ…。



「お前、彼女いんのに女紹介してって言ったの? 最低じゃん?」



ヒロさんが軽蔑の顔で俺を見る。
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