喧嘩するけど、君がいい

部屋、幼馴染



--・ ・--・ ・・-・- ・・・- 


「おっじゃまっしまーす!」


「はい、どーぞ。
あ、美紅。ハンガー使う?
荷物は適当に置いて」


「うん。ありがと……って、待って?
なにココ……本当に律の部屋?
すっごいオシャレじゃん」


「そう?なんもなくない?
あ、そのソファにでも座って」


「そう!
物が少なくて……
全体的に白くて……
グレーのソファが映えてて……
え、センス()。参考画像どれ?」


「いや……ほとんどタクマに選んでもらった」


「仲良っ」


「まーね。……妬ける?」


「いや、そんな対抗心はナイけど」


「………………」


「あ、そうそう。はいコレ。
引越し祝いね。ベタだけど、ハンドソープ」


「え、ありがとう。
引越し祝いなんかもらうの、初めてやわ」


「そっか。確かに。
学生寮入る時に渡すイメージはないかも」


「それもそうか」


「どう?リアル一人暮らし」


「やー、大して変わらんな。
食堂なくなった分、自炊の頻度が増えたくらい」


「おー。流石の家事スキルだね。
でも寮の時は、タクマくんとか他の友達が近くに居たでしょ?寂しいとかないの?」


「うん。まあ、ちょっと……寂しくはある」


「え、珍しく素直。ビックリ」


「自分が聞いたくせに」


「私が定期的に来てあげようか?」


「え゛」


「何。その微妙な顔。嫌なら嫌って言いなよ」


「嫌……ではない、けど。
嬉しいような、悲しいような……男として」


「で、何する?
"イカ・タコ インク"……あ、"大乱闘兄弟達"は?」


「早。もうゲームすんの」


「だって。やることある?他に」


「……ナイけど。
ちょお待って。お茶か何か淹れる」


「ありがとう、律ママ」


「誰がママやねん」


「すご。ベタツッコミ。ほんと染まったね」


「……ダージリンか、カフェオレ」


「カモミールティーがいい」


「いや、あるわけないやろ。
男一人暮らしに、そんなハーブティー。
紅茶あるだけでも褒めてくれよ」


「この前、圭くんの家行ったときに淹れてもらったの」


「え、カモミール?洒落(シャレ)てんなぁ……」


「うん。
……"朱音(あかね)ちゃん"が、好きなんだって」


「あーー………なるほど……えーと………」


「……"ノンカフェイン"だから、良いんだって。
でも飲み過ぎるとダメだから……圭くんがセーブしてあげてるんだって」


「…………………………美紅サン?
ご自分の傷、抉りたい気分?」


「いや……スカッとしたい気分」


「………………うん。大乱闘しようね。
そもそも、なんで行ったん?圭兄の家」


「見て欲しかったんだ。
……可愛く、描けたから」
 

「え、何を?」


「…………招待状の返事」


「あ…………あぁ……そう………………」


「私の傷、抉りたい気分?」


「いや……仕組まれた罠やろ、こんなん。
……もー、全然決まらんし。
独断でミルクティーにすんで。文句禁止な」


「ありがと。取りに行……あれ?」


「何?」


「いや……さっきからさ、
本棚の上、"何かあるなぁ"とは思ってたんだけど……」


「え?………………あ」


「この"ピンクの貝殻"…………
なんとなく気になるというか……。
なんだろ……懐かしい感じがする」


「……………………」


「うーん……気のせい、か……?」


「…………気のせいやろ」


「というか、律。
なんかコレだけ異質じゃない?突然の乙女趣味?」


「……ちゃうわ。ほっといて」


「ヒド。傷付いた」


「可哀想に。
……傷ついてばっかやん」


「うわ。そういうこと言う??」


「………………なぁ、美紅」


「何?
あ、お湯沸いてるよ?」


「……………………うん。なんでもない」


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