浅黄色の恋物語
 もちろん恋愛だって考えなかったわけじゃない。 好きな人は居たよ。
でも繋がることは無かった。 無縁だって思ってた。
 学生時代を通してバロック音楽にのめり込んでたからね。
バッハとかスカルラッティーとかあの頃の音楽をよく聞いてた。
リコーダーアンサンブルをやってたからさ。
 失明したことで小学生時代の先生に誘われて始めたら8年間もやっちゃって、、、。
でも楽しかったなあ。 夏の合宿もそうだった。
 アンサンブル部の連中と学校に泊まってレッスンを受けたんだよ。 今じゃあ考えられないなあ。
休憩時間にはプールに飛び込んで頭を冷やすんだ。 気持ち良かったなあ。
 最後の年には最初で最後のソロを任せてもらった。 感動だった。
『アルルの女』の『メヌエット』を任されたんだ。
まさか、あの曲を最後の文化祭で吹くことになるとは思わなかった。
 吹き終わった時、体育館がシーンとなった。
そして火を噴くような拍手が、、、。 (やり終えたな。)って思ったよ。
 8年間、笑われようと何をされようと我武者羅に噴いてきた結果が出たんだ。 それでぼくは福岡を離れた。
按摩 鍼 灸の免許を取ってから大阪に行ったんだ。
 入試はさんざんだったよ。 国語も数学も理科も。
3年間勉強してなかったんだもん 答えられなかった。
 それでも「せっかく勉強したいって言ってるんだから入れてやれや。」って言ってくれた先生が居て、その助け舟も有って入学できた。
按摩の次は音楽の勉強をしたんだよ。 クラシックだったけどね。
 華々しい結果は出せなかった。 でもそれが後で活かせたんだよな。
福岡に戻ってギターを買ったぼくは作曲にのめり込んだ。
 作詞もやった。 楽しかったなあ。
mtrまで買い込んでレコーディングごっこもやったよ。
15年の間にギターも20本くらいは買ったかな。
 でもね、エリートとドブロは知り合った男に持ち逃げされて売り払われてしまった。
そいつがリサイクルショップの金を使い込んだとかで穴埋めにされたんだ。 悔しかったな。
 ドブロは中古だったけど現金で買ったやつだったからさ、、、。
(たぶんそうだろうな。)とは思ったけど被害届は出さなかった。
甘かったと言えば甘かったよ。 警察を動かしてれば戻ってきただろう。
 でもね、恨みの連鎖を避けたかったんだ。
もう25年前の話だよ。 懐かしいね。
 そしてぼくは本気で福岡を離れたんだ。 自分の人生を大事にしたくて。
それから流れに流れて北海道に来たわけなんですよ。 でも何で北海道だったんだろうなあ?
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