浅黄色の恋物語
 月末の水曜日にはガイドヘルパーと近所を散歩することにしました。
この辺に何が在るのか分かってないんでね。
 そして近隣の人たちに『あんな人も住んでるんだ。』ってのを思い知らせるために。
 市役所の対応に愕然としたんですよ。
それはね、jアラートみたいな緊急避難情報が出た時の対応。
 市役所に聞いてみた。 そしたら、、、。
 「市役所じゃあ個別対応は出来ないからヘルパーさんにお願いしてくださいよ。
ヘルパーさんと相談して避難計画を作ってくれたら支援しますよ。」って言ってきたんだ。
 ヘルパーにだって家族が居るんだ。 家族を捨ててまで利用者の避難支援をしなきゃいけないのか?
ガイドヘルパーのおじさんは困惑しまくった。
それを見たから決意したんだよ。 この散歩を。
 やれるところまでは自分でやる。 動いているうちに誰かが飛んでくるだろう。
それでも大変だったら周りの人たちが市役所を動かそうとする。 そんな人のうねりを作りたい。
自分から動かないと何も始まらないからね。
 百合を育てて仕事をして飲んで食ってるだけじゃないんだよ ぼくだって。
ねえ、久子姉さん。

 土曜日になるとまたまた久子姉さんと会うんだ。 今度は何の話で盛り上がるのかなあ?
特に[これ]って決めてるわけでもないんだけどねえ。
 でもさあ何か知らない間に盛り上がってるんだよ。 いつも傍に居たいなあ。
人工関節を入れてるって言うけど見た目は分からないんだよなあ。
まだまだ元気だ。 意地悪もするって言うくらいだから。
見てると本当に可愛いんだよなあ。
 本当に何も無ければ今頃は家で思う存分にやりたいことをやってたはず。
グループホームじゃなあ。
 ぼくだっていつどうなるか分からない。 そのためにも今からやることをやっておかなきゃ、、、。
70を過ぎて「この人生 何だったんだろう?」なんて言いたくないよ。
そのためにも笑われようが怒鳴られようが無視されようがやりたいことをやっておく。
 迷惑を掛けるようなことはしたくないけどね。

 気ままに飲んで気ままに料理を作って気ままに遊んで気ままに働く。
それでいいんじゃないかなあ?
じゃあ嫁さんなんて要らないよね? それは違うなあ。
 一人で飲んでたって面白くないじゃん。
話し相手だけか? それも違うなあ。
だからってエッチだけってのも違うからね。
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