浅黄色の恋物語

第4章 仄かな思いを

 70代のおばあちゃんとはいっても現代のおばあちゃんは様相が全く違いますねえ。
昔は養老院にお世話になってるとか家の奥で静かにしてるとかいうイメージも有ったんだけど、、、。
 今はねえ70代のほうが現役世代より元気だったりします。
隣町で働いていた頃もそんな人に会いました。 頭の冴えてるおばあちゃんでしたねえ。
時々はポーッとなって「え?」って思わせてくれる人でしたけど。
 その人は議会から要請を受けて仕事をしてましたね。 旦那さんが役場の人だったから。
性格は本当に気難しい人で、本当に理解して納得するまで信用しない人だったんですけど。
 でもね、ぼくのマッサージは最後の最後まで信頼してくれてました。 ありがとうございます。
ずっと病気で悪かった旦那さんを任せてくれたんですよね。 感謝しか無い。
 廃業した時も「またいつでも遊びにおいでね。」って泣きながら送り出してくれたんですよね。
英子姉さんは意外と可愛い人だった。

 その旦那さんは大きな手術も有って体が弱ってたんです。 最初は座るのも大変だった。
その人がテーブルを頼りに自力で立ち上がった時、英子さんは泣いて喜んでくれた。
旦那さんが自力で歩けるようになるとさらに喜んでくれてね。 「先生に全てを任せるよ。 頼んだよ。」って言ってくれた。
 これほどに心強い人も居なかったなあ。
 かと思うと「先生が来ない日は寂しくて寂しくて、、、。」って言ってくれる人も居る。 嬉しいねえ。
「あんたが来んでも何ともないわ。」なんて言われたら寂し過ぎます。
 いやいや、これまでに関わってきた人たちって独り者って人が多かったな。
そりゃあ寂しくもなるよ。 手を握る人も居ないんだからね。
 老健で働いていた頃、あまりに仕事が増えたのでもう一人のマッサージ師を雇ってもらいました。
来てくれたのは後輩の女の子でした。
 その子のお母さんも一緒に施設を見に来ましてね。
もちろん、ぼくとも話しましたよ。 言われました。
「あなたが居てくれたら安心して就職させられる。」って。
 数年後には移動になりましたけどね。「泣き」

 その施設は何となく変でした。
介護保険が始まる前でいろいろとやらかしてたんですよね。
 お年寄りの皆さんは介護認定を受けてきたわけではなく市役所が決めた措置入所或いは措置通所です。
 ところがね、名前だけ書いておけば決定されてジャンジャンお金も貰えることが分かりました。
今じゃ考えられませんね。 笊だったわけです。
 いつだったか、デーサービスの主任さんに言われたことが有ります。
「今日さあ、役所から調べに来るんだけどこの人のことを聞かれたら「病気で休んでます。」って言ってね。」
口裏合わせをしなきゃいけなかったんですねえ。 その人は嘘に耐えられなくなって辞職しましたけど。
 そりゃそうだよ。 使ってない施設の利用料を利用者に請求したりひどかったんだから。
 ついでに言えば給料も毎年下がっていくんです。 おかしいなあ。
12万何ぼ会ったはずなのに5年経ったら10万にまで下がりました。
(これじゃあやってられなくなるぞ。) そう思って辞職したんです。
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