Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
魔剣異聞⑦――悪魔に選ばれし者
村の住人が見守る中、数人の男女が石に刺さっているコラプサーを抜こうとした。が、誰も抜けない。中には、屈強な力自慢の者もいたが、渾身の力を込めても引き抜けなかったのだ。
「あーあ、力技でやってもムリだって」
「コラプサーは、村で一番欲が深い人間を見抜くんだ。その人間を使い手に選ぶからな」
近くにいた浮浪者たちの話に、アルタイルは耳をそばだてた。
「お前やってみろよ」
「ムリだって。俺はもう60歳を過ぎたし、欲なんて強くねえよ。その日暮らしを無事にできればいいのさ。こういうのは、若いヤツが選ばれるもんだ」
アルタイルは夜になると天狼の祠にやってきた。繁華街はまだ賑わっているが、ここは人気(ひとけ)がなく、しーんとしている。しかも、祠の禍々しさがその不気味さを一層際立たせている。
アルタイルはコラプサーの柄に手をかけた。
「コラプサー、力を貸せ。俺を主として認めろ」
なんとも傲慢は台詞だった。が、欲の深い者が使い手に選ばれるなら、この村で…否、この星の大地で一番の傲慢な人間になる必要がある。生まれてから人の愛を感じずに育ってきた身だ。それなら、欲望を最上の価値として、のし上がってみせる!
アルタイルが固く誓うと、柄がひとりでに抜け始めた。黒い静電気のような稲妻が刀身に走る。やがて刀身が完全に抜け、宙に浮いた。
「…これは」
コラプサーはアルタイルの手に収まると、その名のとおりブラックホールのような黒い光を放ち始めた。鍔の髑髏の目からは、赤い光が爛々と輝いている。やがて光が収まると、刀身を巻くように白い布のようなものが現れ、鞘になった。力が全身にみなぎってくるのを感じた。
「いらっしゃ…てめえか」
酒場の主人がドアの方を向くなり、吐き捨てた。ツケがたまっている客・アルタイルが来訪したのだ。アルタイルは主人につかつかと寄っていく。
「ツケを払いに来たぜ」
「そうか、それならさっさと出しな」
アルタイルは主人の手にひと包みの袋の中身を落とした。すると…
「うわあっ!!」
手に載ったのは、人間の目と鼻と耳だった。
「何のまねだ!!」
「借金とりを殺したから俺の借金は帳消しだ。それをまず知らせてやろうと思ったのさ」
そう言うと、今度は大きめの袋の中身を床にころがした。それは、目、鼻、耳のない人間の生首だった。
「ぎゃあああ!!」
「いやあああ!!」
客の悲鳴が響く。店の主人は怒りでわなわなと震えている。
「こいつは…俺のダチじゃねえか!! よくもやってくれたな!!」
「あ、そうだったのかあ」
主人はアルタイルに組み付こうとした。が、それより早くアルタイルの剣が主人の胸を刺し貫いた。
「が……ああ……」
動きが止まった主人に、アルタイルが軽い口調で言う。
「そうそう、言い忘れたけど俺さ、この魔剣に選ばれたみたいなんだ。この剣を持つ者が村で一番偉いんだろ だったら、ツケも帳消しにしてくれよ」
主人は体を震わせるだけで動かない。
「あれ? これだけでしゃべれないのか? ちょうどいい、この前恥をかかせてくれた礼に、じわりじわりと体を切り裂いてやるよ」
アルタイルは笑顔を浮かべながら、ゆっくりと主人の胸を横に薙いでいく。まるで、肉をきれいにスライスするかのように……。
「ぐぐぐ……」
「へえ、もう10秒たつのにまだ死んでない。さすがに屈強だな。でももう飽きたからお終いにするぜ」
剣を一閃させて一気に切り裂いた。血しぶきが天井から床まで飛び散る。主人は倒れると、ピクピクしながら動かなくなった。
「それじゃ……」
アルタイルは刀身を上に構えた。すると、コラプサーが主人や先の生首を吸い取っていく。終わった頃、禍々しい光が刀身を包んだ。
「こりゃいいや。死体も片付けてくれるなんて」
楽しそうに笑っている。その事件は村じゅうに知れわたった。
この時、アルタイルが西の村の支配者となったのだ。
「あーあ、力技でやってもムリだって」
「コラプサーは、村で一番欲が深い人間を見抜くんだ。その人間を使い手に選ぶからな」
近くにいた浮浪者たちの話に、アルタイルは耳をそばだてた。
「お前やってみろよ」
「ムリだって。俺はもう60歳を過ぎたし、欲なんて強くねえよ。その日暮らしを無事にできればいいのさ。こういうのは、若いヤツが選ばれるもんだ」
アルタイルは夜になると天狼の祠にやってきた。繁華街はまだ賑わっているが、ここは人気(ひとけ)がなく、しーんとしている。しかも、祠の禍々しさがその不気味さを一層際立たせている。
アルタイルはコラプサーの柄に手をかけた。
「コラプサー、力を貸せ。俺を主として認めろ」
なんとも傲慢は台詞だった。が、欲の深い者が使い手に選ばれるなら、この村で…否、この星の大地で一番の傲慢な人間になる必要がある。生まれてから人の愛を感じずに育ってきた身だ。それなら、欲望を最上の価値として、のし上がってみせる!
アルタイルが固く誓うと、柄がひとりでに抜け始めた。黒い静電気のような稲妻が刀身に走る。やがて刀身が完全に抜け、宙に浮いた。
「…これは」
コラプサーはアルタイルの手に収まると、その名のとおりブラックホールのような黒い光を放ち始めた。鍔の髑髏の目からは、赤い光が爛々と輝いている。やがて光が収まると、刀身を巻くように白い布のようなものが現れ、鞘になった。力が全身にみなぎってくるのを感じた。
「いらっしゃ…てめえか」
酒場の主人がドアの方を向くなり、吐き捨てた。ツケがたまっている客・アルタイルが来訪したのだ。アルタイルは主人につかつかと寄っていく。
「ツケを払いに来たぜ」
「そうか、それならさっさと出しな」
アルタイルは主人の手にひと包みの袋の中身を落とした。すると…
「うわあっ!!」
手に載ったのは、人間の目と鼻と耳だった。
「何のまねだ!!」
「借金とりを殺したから俺の借金は帳消しだ。それをまず知らせてやろうと思ったのさ」
そう言うと、今度は大きめの袋の中身を床にころがした。それは、目、鼻、耳のない人間の生首だった。
「ぎゃあああ!!」
「いやあああ!!」
客の悲鳴が響く。店の主人は怒りでわなわなと震えている。
「こいつは…俺のダチじゃねえか!! よくもやってくれたな!!」
「あ、そうだったのかあ」
主人はアルタイルに組み付こうとした。が、それより早くアルタイルの剣が主人の胸を刺し貫いた。
「が……ああ……」
動きが止まった主人に、アルタイルが軽い口調で言う。
「そうそう、言い忘れたけど俺さ、この魔剣に選ばれたみたいなんだ。この剣を持つ者が村で一番偉いんだろ だったら、ツケも帳消しにしてくれよ」
主人は体を震わせるだけで動かない。
「あれ? これだけでしゃべれないのか? ちょうどいい、この前恥をかかせてくれた礼に、じわりじわりと体を切り裂いてやるよ」
アルタイルは笑顔を浮かべながら、ゆっくりと主人の胸を横に薙いでいく。まるで、肉をきれいにスライスするかのように……。
「ぐぐぐ……」
「へえ、もう10秒たつのにまだ死んでない。さすがに屈強だな。でももう飽きたからお終いにするぜ」
剣を一閃させて一気に切り裂いた。血しぶきが天井から床まで飛び散る。主人は倒れると、ピクピクしながら動かなくなった。
「それじゃ……」
アルタイルは刀身を上に構えた。すると、コラプサーが主人や先の生首を吸い取っていく。終わった頃、禍々しい光が刀身を包んだ。
「こりゃいいや。死体も片付けてくれるなんて」
楽しそうに笑っている。その事件は村じゅうに知れわたった。
この時、アルタイルが西の村の支配者となったのだ。