残念先輩って思われてますよ?
「もっ申し訳ありません、事情がわからないので、ここの担当のものを呼んでまいります」
「おいっ、逃げるなっ、ここにいろ──なんだお前? ちゃんとわかってないのに受付なんてしてんのか? 仕事舐めてるだろ? ん? どうなんだ?」
私は何も言えなくなってしまい、目を伏せると更にそのことに絡んでくる。
「なんだその態度は? 目を背けやがって……」
なぜか同期の男性社員ではなく、完全に私を標的にしている。
(だめ……怖い……)
「こんにちはー、どうしましたぁー!」
振り返ると、異変に気が付いた廣田先輩が家の開いている玄関の中から出てきながら大きな声で年配の男性に声を掛ける。
男は廣田先輩が近づいてくるまで、もの凄い形相で睨みつけている。
「お前がここの責任者かぁぁぁ!?」
充分近づいたところで男は至近距離で廣田先輩に音量のつまみが壊れたステレオの様に大音声で怒声を浴びせかける。
「ええ、そうですが何か?」
廣田先輩はまったく動じた風もなく、けろりとした顔と涼しい声で質問を返す。
いつの間にか私の間に割って入っていて、いつもなら決してしない、かなり至近距離に敢えて立ち、年配の男性を見下ろす。しかしその表情は特に怒気も何も孕んでおらず。至極淡々としている。