早河シリーズ短編集【masquerade】
そろそろ私の独白も終わりに近付いてきた。あと少しお付き合い頂きたい。
静岡連続殺人事件の後、私は渡辺亮に別れを告げてアメリカに戻った。
美月にはアメリカ行きを話さなかった。日本を離れた理由のひとつには佐藤を失って傷付き、泣いている美月を見ていることが出来なかったから。
己の復讐を遂げるために美月の恋心を利用した。誰が知らなくとも私自身が知っている最大の罪。
私が犯罪組織カオスの人間だと知るのは、木村隼人と探偵の早河仁だけ。勘のいい木村隼人は私が間宮を憎んでいることを見抜いていた。
木村隼人も早河仁も警察と美月に私の正体は話さなかった。もちろん渡辺亮も私のもうひとつの顔を知らない。
渡辺にも美月にも真実は知られたくない。こんなに醜い姿を知られたくない。
大切な人を傷付けてでも欺いてでも、どんなに卑怯なことをしてでもやり遂げたかった。
心の拠り所としていた犯罪組織カオスは7年前にキングの逮捕と共に壊滅。私の名前もカナリーではなくなった。
*
──アメリカ時間、2016年8月4日午前7時。
『Akari』
朝日の差し込むベッドルームでアメリカ人の夫が私の名を呼ぶ。カナリーではなく、Akariとして呼ばれる私の名前。
Akariは日本語でどんな意味を持つかと夫に聞かれた時に、私は〈Light〉と説明した。
太陽のあかり、電気のあかり、ろうそくのあかり、皆を明るく照らす、ぽかぽかの光。美月が私に与えてくれたものだ。
美月と出会えて私は救われた。私だけではなく、佐藤瞬と木村隼人にとっても美月は光だった。
日本から遠く離れたこの地で私はあの子の幸せを祈り続けている。
夫は私が犯罪組織に所属していた過去も、間宮誠治との悪夢も知らない。私に罪があるのなら、大切な人達を欺き通していると言う罪だろう。
誰にも言えない罪を抱えて生き続けよう。それが私の贖罪。
真夏の白昼夢から10年後、私は間もなく母親になる。私の胎内に宿る命は今日も元気に生きていた。
静岡連続殺人事件の後、私は渡辺亮に別れを告げてアメリカに戻った。
美月にはアメリカ行きを話さなかった。日本を離れた理由のひとつには佐藤を失って傷付き、泣いている美月を見ていることが出来なかったから。
己の復讐を遂げるために美月の恋心を利用した。誰が知らなくとも私自身が知っている最大の罪。
私が犯罪組織カオスの人間だと知るのは、木村隼人と探偵の早河仁だけ。勘のいい木村隼人は私が間宮を憎んでいることを見抜いていた。
木村隼人も早河仁も警察と美月に私の正体は話さなかった。もちろん渡辺亮も私のもうひとつの顔を知らない。
渡辺にも美月にも真実は知られたくない。こんなに醜い姿を知られたくない。
大切な人を傷付けてでも欺いてでも、どんなに卑怯なことをしてでもやり遂げたかった。
心の拠り所としていた犯罪組織カオスは7年前にキングの逮捕と共に壊滅。私の名前もカナリーではなくなった。
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──アメリカ時間、2016年8月4日午前7時。
『Akari』
朝日の差し込むベッドルームでアメリカ人の夫が私の名を呼ぶ。カナリーではなく、Akariとして呼ばれる私の名前。
Akariは日本語でどんな意味を持つかと夫に聞かれた時に、私は〈Light〉と説明した。
太陽のあかり、電気のあかり、ろうそくのあかり、皆を明るく照らす、ぽかぽかの光。美月が私に与えてくれたものだ。
美月と出会えて私は救われた。私だけではなく、佐藤瞬と木村隼人にとっても美月は光だった。
日本から遠く離れたこの地で私はあの子の幸せを祈り続けている。
夫は私が犯罪組織に所属していた過去も、間宮誠治との悪夢も知らない。私に罪があるのなら、大切な人達を欺き通していると言う罪だろう。
誰にも言えない罪を抱えて生き続けよう。それが私の贖罪。
真夏の白昼夢から10年後、私は間もなく母親になる。私の胎内に宿る命は今日も元気に生きていた。