両片思いだったのに略奪されて溺愛されました
ふわふわとした現実と、もうひとつの現実との間に揺れる
学生だった頃なんて、随分と昔のはずなのに
「売れそうだな」と声を出して、いっこうにこっちを見ずに、「そうかな」と答える杏の頭を眺める
どれだけ褒めても、それはお世辞なんかじゃなくて本当のことなのに
杏は、絶対に仕事のことで表情を変えることはない
――むしろ、それが何故そういうのかわからない様に、不安そうな顔にすらなっている気がする