ベイビー•プロポーズ

碧葉の話をざっくり纏めるとこうだ。


彼女が新しい香水を欲しいということで、百貨店の化粧品フロアを回っていた。


目星の店舗でどれにしようか一緒に選んでいた時、碧葉の好きな香水があって「俺これ好き」と何の気なしに言ったらしい。


それを聞いた彼女に「どうしてまだ嗅いでないのにこの香りが分かるの?」「元カノが付けてたの?」とその場で詰められた、と。


「もう帰る!」と彼女がぷりぷりと店を出て行くから「分かった」と碧葉が答えると、さらに彼女の怒りが爆発。「私がこんなに怒ってるのにどうしてその一言で済ませるの!?」とさらにブチ切れられたらしい。


「情緒やばくね?」

「うん。やばい」

「まじでめんどくせー、て思ってそのまま置いて帰ってきた」

「おつかれ」

「見てこれ、今もめっちゃ鬼電きてる」


カウンターキッチンからこちらに着信画面を向ける碧葉は、心底面倒そうに眉を顰めながら赤い拒否ボタンを押した。


……なんて無慈悲な。


碧葉は顔がいい。スタイルもいい。大人びた雰囲気も相まってかなりモテる。のだけれど、女の子に対する態度は恐ろしいほどにドライだ。
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