【完結】年の差十五の旦那様Ⅱ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
「シェリル様!?」

 その私の行動を見て、クレアが驚いたような声を上げた。よく見れば、サイラスさんもギルバート様も驚いている。……私の行動が、相当予想外だったのかもしれない。だから、私はそんな三人を他所にお手紙をびりびりに破いていく。

「……私、お父様のこと嫌いよ。お義母様のことも、嫌い。だから、このお手紙は捨てるわ」

 手の中でびりびりになったお手紙だったものを見てそう言えば、ギルバート様は「そうか」とだけ言葉を下さる。その後「サイラス、この紙くずは捨てておけ」とサイラスさんに告げていた。

「かしこまりました。正直、触りたくもないのですが……」
「分かっている。だが、この男がいなかったらシェリルはここに来ていない。その点では、感謝するべき相手だろう」
「さようでございますね」

 サイラスさんとギルバート様の会話に耳を傾けながら、私はサイラスさんにお手紙だった紙くずを手渡す。それを見たクレアは「シェリル様、かっこいいです……!」と言ってくれた。……かっこいい、か。そんなこと、ないのに。私はただ、嫌なものだったから破り捨てただけ。これは、価値のないものだから。

「中身はどうせ、お金の無心だと思います。ギルバート様に、迷惑はかけられません」

 ただ、それが一番の本音だった。私に迷惑がかかるだけならばまだしも、ギルバート様にだけは迷惑をかけたくなかった。しかし、私のその言葉を聞かれたギルバート様は、「いや、シェリルにかけられる迷惑ならば、嬉しいぞ」と言ってくださる。

「だが、シェリルの父親にかけられる迷惑はごめんだな。……ところで、シェリル」

 ギルバート様はそこで一旦お言葉を区切られると、私に向けて控えめに手を広げてくださった。一瞬、私はその行動にぽかんとするけれど、これは多分抱きしめてくださるということだろう。だから、私は控えめにギルバート様に抱き着いてみる。
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