【Guilty secret】
『俺を見ても知らないフリをする約束をして、芽依と離れました。芽依は俺が教えた通りに交番に駆け込んで保護された。あれから10年、芽依と会うことはなかった。このまま会わずに俺達は生きていけると思っていました』
赤木の話が終わる頃、彼を乗せた車も赤木のマンションへの帰路を辿っていた。運転手は当てもなく走らせているように見えて、本当は話の進行に合わせてルートを選んでいたのかもしれない。
眼鏡の男が煙草を咥えた。
『しかし10年後に会ってしまったのか』
『移転した職場の近くの本屋で、芽依がバイトしているとは思いませんでしたよ。今になって10年前の事件の記事を書こうとする記者も現れた。偶然が重なるって怖いですね』
『記者だけじゃない。10年前の事件ではまた警察が動き始めている』
夕暮れの三軒茶屋で記者の西崎沙耶と話をしていた男二人組の素性は、眼鏡の男には周知だ。
警視庁捜査一課の元刑事で探偵の早河仁と、早河の協力者で情報屋の矢野一輝。
矢野の妻は警視庁刑事の小山真紀。三人共、眼鏡の男がよく知る人物だった。
警察よりも自由に動ける早河が動き始めたのは少々厄介だ。早河と矢野が得た情報はいずれ真紀に伝わる。
真紀が赤木と芽依に辿り着けば、否応なしに二人には警察の追及が襲いかかる。
『警察がお前達の犯行に気付けばお前と芽依は法の裁きを受けるだろう』
『俺は覚悟はできています。でも芽依は何もしていない、あいつは関係ない』
『お前だけが罪を被っても不可解な点は残る。警察は必ず芽依を追及するぞ』
『どうすればいいんでしょうね。こんなことになるなら、やっぱり芽依とは二度と会ってはいけなかったんだ』
二度と会わないと誓った宝物と再び巡り会ってしまった。運命でも宿命でもない、これは呪いと罰だ。
人を殺した呪いと罰なのだ。
車が赤木のマンションの前で停車した。赤木は車の動きが止まっても座ったまま、顔を伏せている。
眼鏡の男は紫煙を吐いて、項垂れる赤木を横目に見た。
『俺もお前と同じ事を思って生きている。二度と会ってはいけない“その人”の幸せを守るためなら、人殺しでも何でもする』
『……あなたにも二度と会ってはいけない人がいるんですね』
『だから俺はお前と同じだと言っただろう?』
口元を斜めにして男は微笑んだ。
『芽依を守る方法がひとつだけある。これから俺の言う通りに出来るか?』
これは悪魔の囁き? 魔王との契約?
悪魔でも魔王でも、構わない。それで芽依が守れるのなら。
10年前の佐久間芽依も10年後の清宮芽依も守れるのなら。
もしもこの男が悪魔でも魔王でも、今の赤木には男が救いの神にしか見えなかった。
赤木の話が終わる頃、彼を乗せた車も赤木のマンションへの帰路を辿っていた。運転手は当てもなく走らせているように見えて、本当は話の進行に合わせてルートを選んでいたのかもしれない。
眼鏡の男が煙草を咥えた。
『しかし10年後に会ってしまったのか』
『移転した職場の近くの本屋で、芽依がバイトしているとは思いませんでしたよ。今になって10年前の事件の記事を書こうとする記者も現れた。偶然が重なるって怖いですね』
『記者だけじゃない。10年前の事件ではまた警察が動き始めている』
夕暮れの三軒茶屋で記者の西崎沙耶と話をしていた男二人組の素性は、眼鏡の男には周知だ。
警視庁捜査一課の元刑事で探偵の早河仁と、早河の協力者で情報屋の矢野一輝。
矢野の妻は警視庁刑事の小山真紀。三人共、眼鏡の男がよく知る人物だった。
警察よりも自由に動ける早河が動き始めたのは少々厄介だ。早河と矢野が得た情報はいずれ真紀に伝わる。
真紀が赤木と芽依に辿り着けば、否応なしに二人には警察の追及が襲いかかる。
『警察がお前達の犯行に気付けばお前と芽依は法の裁きを受けるだろう』
『俺は覚悟はできています。でも芽依は何もしていない、あいつは関係ない』
『お前だけが罪を被っても不可解な点は残る。警察は必ず芽依を追及するぞ』
『どうすればいいんでしょうね。こんなことになるなら、やっぱり芽依とは二度と会ってはいけなかったんだ』
二度と会わないと誓った宝物と再び巡り会ってしまった。運命でも宿命でもない、これは呪いと罰だ。
人を殺した呪いと罰なのだ。
車が赤木のマンションの前で停車した。赤木は車の動きが止まっても座ったまま、顔を伏せている。
眼鏡の男は紫煙を吐いて、項垂れる赤木を横目に見た。
『俺もお前と同じ事を思って生きている。二度と会ってはいけない“その人”の幸せを守るためなら、人殺しでも何でもする』
『……あなたにも二度と会ってはいけない人がいるんですね』
『だから俺はお前と同じだと言っただろう?』
口元を斜めにして男は微笑んだ。
『芽依を守る方法がひとつだけある。これから俺の言う通りに出来るか?』
これは悪魔の囁き? 魔王との契約?
悪魔でも魔王でも、構わない。それで芽依が守れるのなら。
10年前の佐久間芽依も10年後の清宮芽依も守れるのなら。
もしもこの男が悪魔でも魔王でも、今の赤木には男が救いの神にしか見えなかった。