好きを教えて、生意気なきみ
それから夏休みが終わり、今日は夏休み明けはじめての図書委員の日。



あれ以降、あたしは夏風邪を引いたり、渚が用事で来られなくなったりして、あたしたちは会っていない。



久しぶりに渚に会えるのがなんだか嬉しくて、あたしは小走りで図書室に向かった。



「お~、やっと来たか」



先に来ていた渚は、さっきまで寝てたのか眠そうな顔をしている。



もう、図書委員の仕事もちゃんとやってよね。



「もう泣いてねえか?」

「泣いてるわけないでしょ! あれから何日経ってると思ってるの!」

「ハハッ。冗談」



そう言って笑う渚の顔は今日も相変わらずのイケメン。



「渚が勧めてくれた本読んだよ~。超面白かった!」

「だろ? 最後の展開とか天才だよな」

「ね、作者さんのほかの作品も気になって色々読んじゃった」



そんな話をしていたらカウンターに人がやってきた。



「返却お願いしまーす」

「はいはーい。ってあれ」



カウンターに来ていたのは尚先輩だった。



たくさん本をカウンターに乗せた尚先輩はいつも通りのにこにこ笑顔。



「いっぱい借りたんですね!」

「そう、夏休みは時間いっぱいあったからね」



そう言ってから、「こっちに友達がいないからさ~…」と付け足した。



アハハ…。



あたしは笑うことしかできない。



「まだ友達できてないんですね…」

「そうなんだよ~! 高3の文化祭直前に転校してきた人間はどうやって友達作ればいいわけ?」



かわいそうに…。


こんなに良い人そうなのに…。



話を聞くと、クラスの人たちも話しかけてくれたりはするらしいけど、別に仲良くはなれないらしい。



かわいそうに…。



「あたしが友達になりますよ!」

「本当? 嬉しいな」



なんてあたしたちがきゃっきゃしてたら、寝ていた渚がこっちに来た。



「誰?」

「あ、こちら、尚先輩。高3の文化祭の前に転校してきてから友達ができないんだって。渚も友達になってあげてよ」

「…ああ、文化祭のとき俺のクラスに一緒に来てた人ね」



渚はそう言ってカウンターの椅子に腰を下ろした。



返ってきた本をバーコードで読み取って、返却作業をしてくれる。



いつも仕事しないのに急にどうしたんだろ…。



まああたしは先輩だからね!



後輩には働いてもらおう。
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