追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
「戦争となれば多くの負傷者が出るだろう? その時に治癒魔法があるのとないのとでは武力に大きな差がでる。サラバン帝国には聖女はいないはずだ。つまりそれは聖女の存在が我が国の強みでもあるということだからね」

「確かに重症でも瞬く間に治癒してしまう奇跡のチカラだからな。何度攻めても治癒されて騎士や魔法師が復活するなら、あちらにとっては厄介なことこの上ないだろうな」

騎士団長のリキャルドにはその状況がありありと想像できるのだろう。アルヴィンの言葉に同意するよう深く頷いた。

「治癒魔法が使えなくなった元聖女ティナは、魔力量が桁違いに多いんだ。二人はその噂は聞いたことがある?」

「ああ、確かに。元平民なのに尋常じゃない魔力量らしいと耳にしたことがある」

「……これは公になっていないけど、どうやらミラベル嬢の魔力量を軽く五倍は超えるらしいんだよね」

「軽く五倍……。ミラベル嬢も高位貴族だからそこそこ多いだろうに。レイビスの魔力量に匹敵するくらいなんじゃないか?」

リキャルドに視線を向けられ、私は軽く首を捻った。

なぜならその問いに答えを持ち合わせていなかったからだ。

「さぁ? 計測してみなければ分からない。不明瞭なことに同意はできないな」

一般的に魔力量は身分に比例する傾向にある。高位貴族ほど魔力が多いのだ。おそらく魔力量が多い者同士が結婚して、子に引き継がれるからだと考えられている。

だというのに、(くだん)の元聖女は平民でありながら、私に匹敵すると思われる魔力量を持つ。これは異例すぎる。

 ……その点においても研究対象として大いに興味を引かれるな。

様々な謎を内包する存在に私の研究心がますます刺激される。

そんな私の心の内を見透かしたようにアルヴィンはこちらを見て小さく笑うと、話を続けた。

「つまりね、戦時になった時にそんな豊富な魔力量を誇る聖女がいれば確実に私たちの有利になる。だから失われた治癒魔法が再び戻る可能性があるならば、レイビスにはぜひ研究をお願いしたいんだよね」

「王家公認の研究かよ。こりゃ、レイビスの研究馬鹿に拍車をかけるんじゃねぇのか? 良かったな、レイビス?」

「まあ、私はもともと自分の仮説を検証するつもりでいたからな。アルヴィンに頼まれても、頼まれなくてもやることは同じだ。ただ……」

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