追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
話しながらも、羞恥心に耐えられなかったわたしはもぞもぞと身じろぎをして、体を離す機を窺っていた。

そしてレイビス様がわたしの言葉に意識を奪われた瞬間に、やっと腕の中から抜け出すことに成功した。

包まれていたぬくもりが消え、なんだか寒さと寂しさを感じたが、度を超えた恥ずかしさによって火照った体を冷やすにはちょうど良い。

「街での仕事はなにをしてるんだ?」

レイビス様はわたしが体を離したことよりも、仕事内容に興味を引かれているらしい。

何事もなかったかのような様子で再び問いかけてきた。まるで抱擁など、大したことではないという顔で。

「……平民向け大衆浴場にある処置室で働かせてもらっています」

「処置室? でも君は治癒魔法が今は使えないだろう?」

「はい。ですので、治癒魔法を使わない治療のお手伝いをしているんです。教会にいた頃に医療神官から処置の方法などを学んでいたので」

「確かそこは父が資金援助している場所だと聞いている。私は実際に訪れたことはないがどんな場所なんだ?」

「えっとですね――……」

それからレイビス様から処置室に関する質問をいくつか受け、わたしはそれに答えていった。

気になった物事は納得するまでとことん突き詰める姿勢はレイビス様らしい。

話しながらふと視界に入ったルピナスを見て、わたしはあることを思い出す。

 ……確かルピナスの花言葉って「貪欲」だったよね?

なんとも今のレイビス様にぴったりの言葉だ。

研究はもちろんのこと、関心を持った物事にレイビス様は驚くほど熱心かつ貪欲である。

「なるほどな。話を聞いて父が援助を決めた理由が分かった気がする。それにしても治癒魔法が使えなくとも人を癒そうとするとは、君は慈悲深い心の持ち主なのだな」

「いえ、そんな。わたしなんかで役に立てるならばと思ったまでです」

「教会でも聖女として十年も活動していたのだろう? 人を慈しむ心がなければなかなか続けられないと思うが」

「それはただ使命に従ったに過ぎません」
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