恋は揺らめぎの間に
「俺は、静香の重りになるつもりはない。」
「慎司君は重りなんかじゃっ……」
「もしあの日がなかったら、今思い悩むことはなかったよな…。 ごめんな。」
そんなことはない。そう言い切ればいいのに、なぜこの口は動かないのか。
「俺のことは気にしなくていいから。 もともと、そういう話だっただろ? もうアイツを無理に忘れる必要はなくなったんだ。 アイツのこと、ずっと好きだったもんな。」
…なんで、そんなこと言うの?
涙がこみ上げてきて、鼻の奥がツンとする。目頭が熱くなって、とうとう堪えきれなくなった雫が一粒、頬を伝った。
「確かにあの日の私は、慎司君の優しさを利用しようとしたけれど… 私はただ忘れるためだけに一緒にいたわけでも、慎司君と嫌々一緒にいたわけでもないよ…!?」
「静香が俺に抱いてるのは、情だ。 一緒にいたら、当然抱く感情だ。 俺はそれを狙ったんだ。」
慎司君は痛々しく笑う。
「静香はきっと、自分のことが嫌になってるかもしれないけど、一番悪いのは俺なんだ。 傷心の静香に付け入って、縛り付けたんだから。」
「そんなこと、感じたことない…!」
「現に今縛られてるだろ? 俺がいるせいで、静香は応えられないでいるんだから。」
「うぅっ…。」
涙が溢れて止まらなくなってしまって、顔を覆った私の背を慎司君は優しく撫でる。
「でも、それが、少し嬉しいよ。」
その言葉に、声を出して泣いてしまった。