死にたがり令嬢の新しい人生
そして暫く経つと再びドアがノックされ、リナが料理の乗せられたワゴンを引いて入ってくる。隣に墓地で会った男性を伴って。リナは明らかに気まずい表情のクラウディアに気づいていないのか、笑顔で男性のことを紹介する。
「クラウディア様、こちらランドルフ・ヴィクトール様です」
「…ヴィクトール公爵家の方だったのですか…」
男性もといランドルフは爵位を言い当てられ驚いた様子を見せる。平民だと思い込んでいたのにそうでないと気づいたのだ。探るような目でこちらを見てくるので簡単に説明した。
「…この国の貴族の情報は一通り頭に入っております、叩き込まれましたので」
知識として頭に入っているがさっきは色々と追い詰められていて、彼の正体に思い当たらなかったのだ。記憶によればランドルフはヴィクトール公爵家の次男で23という若さながら第一騎士団の副団長を任命されている。今更ながら失礼な態度を取った事実に冷や汗を掻く。
「…貴族令嬢か?」
「ランドルフ様、そういった込み入った話は食事の後にしてくださいませ。栄養失調気味とお医者様にも言われていたでしょう」
前のめりでクラウディアから話を聞こうとするランドルフをリナが諫める。ランドルフはそれもそうか、とあっさりと引き下がるも何故か近くにあった椅子を持ってきて座る。リナは持ってきたミルクリゾットをベッドの上で食事をするためのテーブルに並べると出て行ってしまった、ランドルフを置いて。困惑するクラウディアが恐る恐る尋ねると。
「…あの、失礼ながら…何故残ったのですか」
「食べ終わるまで見張る」
「見張る」
何故?と聞き返すことは出来なかった。ランドルフはどっしりと構えてここを動かないという意思を感じた。いつも1人で食事をしていたから誰かに見られながら食べるのは落ち着かないが、世話になっている立場で何かを要求することは憚られる。仕方ないか、と諦めたクラウディアはリゾットを一口口に運ぶ。
(…美味しい)
実家で出される料理と呼べるのか微妙なものと比べるのが失礼なほど、疲れた身体に染み渡る優しい味に思わず目が熱くなる。が、男性の前で不用意に泣くわけにもいかずグッと堪えた。ランドルフはというと見張るというより観察している、という表現が相応しい目つきでリゾットをゆっくり食べ進めるクラウディアを見ている。やはり落ち着かないが、ひょっとして目の前で倒れたクラウディアを心配してこうして部屋に残ったのだろうか。目を離した隙にまた倒れても対処出来るように。
(…心配性なのかしら)
なんてことを考えているとあっという間にリゾットを食べ終えてしまった。最近食欲が湧かなかったが、味付けのおかげか食べやすかったので完食出来た。時間を見計ったリナが部屋に入ってきて空いた食器を回収してすぐに出て行く。そしてやはり残るランドルフ。食べている間は黙っていた彼が口を開く。
「食欲はあるようだな」
「…とても美味しかったので。あの、ら…ヴィクトール様」
「ここには俺しかいないのだから、名前で呼べ面倒くさい」
相手は公爵家の人間、こちらが気を遣ったにも関わらず一蹴された。気が引けるが本人が言うのだからクラウディアに拒否権はない。
「では…ランドルフ様。助けていただきありがとうございます、そして…先程は大変失礼な態度を取ってしまい申し訳ありませんでした」
「さっきのことは気にしてないし、目の前で倒れた人間を放置するほど俺は人でなしではない」
頭を下げるとランドルフは素っ気なく言った。思い返してみてもクラウディアの態度は無礼なものだった。気づかなかったとはいえ公爵子息にあの態度は叱責されてもおかしくないのに。本人は涼しい顔で気にしていなさそうだ。さて、とランドルフは長い足をこれみよがしに組み真剣な眼差しでこちらを見据える。クラウディアの身体に緊張が走った。
「クラウディア様、こちらランドルフ・ヴィクトール様です」
「…ヴィクトール公爵家の方だったのですか…」
男性もといランドルフは爵位を言い当てられ驚いた様子を見せる。平民だと思い込んでいたのにそうでないと気づいたのだ。探るような目でこちらを見てくるので簡単に説明した。
「…この国の貴族の情報は一通り頭に入っております、叩き込まれましたので」
知識として頭に入っているがさっきは色々と追い詰められていて、彼の正体に思い当たらなかったのだ。記憶によればランドルフはヴィクトール公爵家の次男で23という若さながら第一騎士団の副団長を任命されている。今更ながら失礼な態度を取った事実に冷や汗を掻く。
「…貴族令嬢か?」
「ランドルフ様、そういった込み入った話は食事の後にしてくださいませ。栄養失調気味とお医者様にも言われていたでしょう」
前のめりでクラウディアから話を聞こうとするランドルフをリナが諫める。ランドルフはそれもそうか、とあっさりと引き下がるも何故か近くにあった椅子を持ってきて座る。リナは持ってきたミルクリゾットをベッドの上で食事をするためのテーブルに並べると出て行ってしまった、ランドルフを置いて。困惑するクラウディアが恐る恐る尋ねると。
「…あの、失礼ながら…何故残ったのですか」
「食べ終わるまで見張る」
「見張る」
何故?と聞き返すことは出来なかった。ランドルフはどっしりと構えてここを動かないという意思を感じた。いつも1人で食事をしていたから誰かに見られながら食べるのは落ち着かないが、世話になっている立場で何かを要求することは憚られる。仕方ないか、と諦めたクラウディアはリゾットを一口口に運ぶ。
(…美味しい)
実家で出される料理と呼べるのか微妙なものと比べるのが失礼なほど、疲れた身体に染み渡る優しい味に思わず目が熱くなる。が、男性の前で不用意に泣くわけにもいかずグッと堪えた。ランドルフはというと見張るというより観察している、という表現が相応しい目つきでリゾットをゆっくり食べ進めるクラウディアを見ている。やはり落ち着かないが、ひょっとして目の前で倒れたクラウディアを心配してこうして部屋に残ったのだろうか。目を離した隙にまた倒れても対処出来るように。
(…心配性なのかしら)
なんてことを考えているとあっという間にリゾットを食べ終えてしまった。最近食欲が湧かなかったが、味付けのおかげか食べやすかったので完食出来た。時間を見計ったリナが部屋に入ってきて空いた食器を回収してすぐに出て行く。そしてやはり残るランドルフ。食べている間は黙っていた彼が口を開く。
「食欲はあるようだな」
「…とても美味しかったので。あの、ら…ヴィクトール様」
「ここには俺しかいないのだから、名前で呼べ面倒くさい」
相手は公爵家の人間、こちらが気を遣ったにも関わらず一蹴された。気が引けるが本人が言うのだからクラウディアに拒否権はない。
「では…ランドルフ様。助けていただきありがとうございます、そして…先程は大変失礼な態度を取ってしまい申し訳ありませんでした」
「さっきのことは気にしてないし、目の前で倒れた人間を放置するほど俺は人でなしではない」
頭を下げるとランドルフは素っ気なく言った。思い返してみてもクラウディアの態度は無礼なものだった。気づかなかったとはいえ公爵子息にあの態度は叱責されてもおかしくないのに。本人は涼しい顔で気にしていなさそうだ。さて、とランドルフは長い足をこれみよがしに組み真剣な眼差しでこちらを見据える。クラウディアの身体に緊張が走った。