副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

「竹田さんから、他にも共有があると伺っていたので」

「あーちょっと場所を変えて話したいですね……」


そう言って、竹田さんが声のボリュームを落とす。


「倉田さん、明日のシフトは何番ですか?」

「明日は珍しく日勤です。インスペクター業務ですね」

「あ、じゃあちょうど良いです。僕も明日は日勤なので。明日、業務終わりに少し話せますか?」

「……? はい、分かりました。大丈夫ですよ」
 

飛鳥さんは出張で当分不在だし、一旦副業の方も落ち着いているので、特にこれといった予定もない。

また明日やり取りすることになり、今日はひとまず帰路についた。


***


家に帰ると、ピロンッとメッセージアプリの通知が届く。スマホを開くと、飛鳥さんからだった。


「澪、仕事終わったか? こちらのトラブル対応も一旦目処はたった。今日は早く寝るんだぞ」

(ふふ、早く寝ろって、子供に言い聞かせるお父さんみたい)


返事を打とうとした時だった。また、ピロンッと通知が鳴る。


「ん? 誰だろう?」


登録していない新規のアカウントだった。送り主は……


「え、竹田さん?」

「突然のご連絡すみません。玉井先輩に倉田さんの連絡先を聞きました。
 先日の指輪を見つけたゲストからお礼のお菓子が届いているのと、最近、副社長について小耳に挟んだことがあったのでそれをお話ししたく。外でお話しできると嬉しいです」

(副社長の件って、何だろう…?)


あまり良い予感はしない。でも、あの気弱で正義感の強い竹田さんがわざわざ連絡してくることだ。聞いておいた方が良さそうだなと感じた。
< 77 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop