高貴な財閥夫婦の秘密

「でも！
今時、政略結婚なんて………！！」

「フッ…
だから“庶民は”バカなんだよ」
馬鹿にしたように笑う、父親。
そして、美奈を鋭く見据えた。

「は？」

「庶民はいつもそう。
瀧沢一族も昔から“地位や名誉”ばかり気にして、俺に媚びを売ってた。
“ウチの息子をよろしくお願いします！”ってね。
確かに知嗣は“純粋に”梨良を想ってる。
でもあいつの親族は、梨良を“瀬野川の令嬢としてしか”見てない。
梨良は、一人の女で俺の娘。
それ以上でも、それ以下でもない。
底辺の奴等ほど“梨良を梨良として見ない”
そんな所に嫁にやるバカが何処にいる？」

「………」

「だから俺も、瀧沢なんかに渡さない」

「………」

「ほら、帰れよ。
ここに来た事、今回だけは特別に梨良達には黙っててやる」

「……………でも…私…」

「あ？
だから！黙っててやると言ってるだろ。
それよりも、お前と話もしたくない」

「………」

「………」

「………」

しばらく沈黙が続いて…………

「…………はぁ…それとも“何かあるの？”」
父親が、意味深に美奈を見据えた。

「………ました…」

「は？」

「妊娠、したんです……！
那留の子を………！！」

美奈は意を決して、父親に言い放った。

「………」

「………」

「………」　

「………」

またしばらく、沈黙が続き…………

フッ…と、父親が噴き出した。

「え……」

美奈がびっくりした様子で、父親を見つめる。

クスクス笑っている、父親。
そして………不意に真顔になった。


「…………思った通りだな……」

そしてそう呟き、美奈を見据えた。