The previous night of the world revolution3〜L.D.〜
「…ところでルヴィアさん、怪我はしてませんか」

「えっ、怪我?」

…いつものことではあるが。

俺は今回、『セント・ニュクス』と『愛国清上会』との抗争のことは、フューニャには何も話していない。

言えば心配するに決まってる。

でもフューニャは聡い子だから、恐らく勘づいてはいるのだと思う。

案の定だ。…やっぱり、隠そうと思っても、隠しきれないものだな。

「怪我はしてないよ。大丈夫」

「そうですか。良かったです…。占いをしてみたら、良くない結果が出ていたので、すぐに呪ったんですけど…。どうやら効いたようですね」

「!?」

…呪った?

効いた?

…何が?

一体何のこと、と聞こうとした、そのとき。

テーブルの上に、赤黒い何かが放置してあることに気がついた。

「フューニャ…。あの…あれ、何?」

「え?あぁ…骨ですね」

骨!?

「うっかり片付けるのを忘れてました。捨てておくのでご心配なく」

フューニャは赤黒い骨をぽいっ、とゴミ箱に捨てた。

フューニャさん、フューニャさんあなた、それ何の骨…。

…鶏だ。手羽元だきっと。そうだそうに違いない。

「さぁルヴィアさん、シャワー浴びてきてください。ご飯を温めるので」

「え…。作ってたの?」

「あなたがいつ帰ってきても良いように、いつも用意してますよ。私は」

「…フューニャ…」

お前は、なんて良い嫁なんだ。

感動に涙ぐみながら、俺はフューニャの言葉に甘え、浴室に向かった。

「…ん?」

浴室に向かう前に、俺はゴミ箱にあるものを発見した。

ゴミ箱に、無造作に捨てられていたのは…先程の謎の骨と、そして。

…首に赤い糸がぐるぐる巻きにされた、藁人形。

俺の脳裏によぎったのは、俺に銃口を向けたが、突然首を押さえて苦しみながら窒息死した敵構成員の姿。

…まさか、フューニャの呪いって。

俺は思わず冷や汗をかき、ぶるっ、と震えた。

「…あら、どうしました?ルヴィアさん」

ゴミ箱の前で立ち尽くす俺に気づき、フューニャが声をかけてきた。

「ひっ…。な、何でもない、大丈夫だ…。それでも俺は、フューニャを愛してるよ」

「そうですか。私もです」

…絶対、フューニャを怒らせないようにしよう。

俺は心にそう誓った。
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