こっから先ははじめてだから

その頃にはもう先輩の姿は見えず。

私は水樹さんたちの前でお辞儀をして。そのまま角を曲がって駅の方へと向かった。

もっと自分のはっきりとした意思を頭の中で即座に固めたいし、その固めた丸いやつをポーンて相手とキャッチボールできる勢いで投げたいのに。

刈谷が固めた丸いやつはドロ団子だから、すぐに壊れちゃうんだよね。

ドロ団子よりせめて粘土だよなあ。今度おちょこととっくり作りに轆轤回しに行こう。


飲み屋が続く道を歩いて行けば、犬は棒に当たるし、刈谷はどこかで見たことのある背中に差し当たった。

憂先輩に近いほどの背丈、広い背中に黒い髪。

接待だったのか、向こうの方にいるビジネスマンに頭を下げている。


「……むがみん?」

「……は、刈谷?」

「なになに、孤高の接待?」

「ソロの芋づる式接待。」


今の今まで醸し出していたデキるビジネスマンの風貌はどちらへ?私を見た瞬間、急に気怠げに肩を落とすんだから。

横浜支部の同期である彼は六神《むがみ》君。通称むがみん。

最近同じ同期である実来春風《みらいはるか》ちゃん(通称ぱるるん)という女の子と、付き合って別れて、そしてまた付き合い始めたのだ。

今どきの彼氏彼女はリユース方式なの? 

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