黒澤くんの一途な愛


だって南実は、中学の頃から迅に片想いしているから。


〜♪


再びスマホが鳴り、俺はメッセージを確認する。


【ありがとう! もうすぐ、赤松くんの誕生日でしょ? だから、プレゼント選ぶのに付き合って欲しくて。】


なるほど。迅も想われてるなと、俺はひとりニヤニヤする。


斗真はさっき、俺と南実がお似合いだって言っていたけど……。


できれば俺は、栞里とお似合いだって言われたい。


俺が好きなのは、栞里だから。


5歳の頃からずっと、栞里のことは一度たりとも忘れたことなどなかった。


栞里は俺の初恋の女の子で、今も俺の大事な人。


もう会えないと思っていた栞里に、やっとの思いで再会できたんだ。


栞里は5歳のあの頃と変わらず優しくて、何より笑顔が可愛い。


ただ可愛いだけでなく、見ず知らずの俺の祖母を助けるために、不良の進藤にも立ち向かうような凄いヤツだ。


俺は、教室の窓際で市川と楽しそうに話す栞里をこっそり見つめる。


最近は栞里を可愛いと思うあまり、少し意地悪なことを言ってしまったり。


この間二人でファストフード店に行ったときも、柄にもなく『ポテト食わせて』なんて言ってしまった。


栞里とは、ただ一緒にいるだけで楽しくて。


一緒にいて、好きだなぁと日々再確認させられている。


今は俺たちの関係が偽装でも、いつかきっと本物にしてみせるから。


俺は栞里の横顔を見つめながら、ひとり決意したのだった。

< 100 / 164 >

この作品をシェア

pagetop