名も無き君へ捧ぐ
第2章
お告げ
奇妙な生活も2週間が過ぎようとしていた。
最近はすっかり守護霊君の存在も慣れてしまっている。
今日の占いのごとく、気をつけるべき行動を聞いてから仕事に行くのも習慣になっていた。
「えーっと今日は、人間トラブル回避のために、1本電車を遅らせるだっけ」
どんなトラブルかという中身までは教えてもらえなかった。
これまでもこれから起こるかもしれない、その難の中身は詳しく教えてもらっていない。
知らないことがいいこともあるんだとか。
確かにそうかもしれない。
信じてない訳じゃないけれど、たまには違うことしても大丈夫だよね。
何かあれば守護霊君が助けに来てくれるんだろうし。
なんて、悠長な事を考えた。
この日は遅らせずに時間通り、電車に乗ることにした。
電車から降りると、足早に改札に向かう。
何にも起こらない。
なんだ、守護霊君の気のせいじゃないの。
すると、ドキッと心臓が鳴った。
2年前に別れた元彼が目の前を横切っていったのだ。
見間違いと思いたい。
でも気になってその姿をつい目で追ってしまった。
くせ毛まじりで眼鏡をかけている背の高いあの人。