名も無き君へ捧ぐ

誕生日の夜


ハッピバースデートゥーユー

ハッピバースデーディアわったしー

ハッピバースデートゥーユー



自分で歌ってて虚しいとかそんなの通り越してる。


だって今日が私の最後の誕生日だから。

最後の誕生日ケーキだ。
あの事故の影響で歪に崩れてしまったが、味に問題はないだろう。



目の前に置かれた、1本のロウソクが立ったワンホールのチョコレートケーキ。

時間かかっても食べ切るつもりだ。

グビっとワインを飲み、虚ろな目でグラスに映る自分の顔を見つめた。


どうせなら…


「どうせなら、好きなことしてから死にたい」


「どうせ、自分なんか居なくても世界は回るんだし」



え、?

今どこから声がした?


グラスを持っていた手がカタカタ震え出す。


何で私の心の声を喋ってるの。

どこか聞き覚えのある男性の声だ。
少し声色が高くハキハキした口調の。


「相変わらずめんどくせーやつだな」


目の前のロウソクがふっと消え、部屋が真っ暗になった。

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