名も無き君へ捧ぐ
花言葉
それから1週間後のこと。
丘の下に看板が立てられていた。
【アオゾラの花】
木で造られた看板には、木の枝で文字も書かれていた。
そして、柵で囲まれ花壇が出来ていた。
汐里が見つけた、あの小さな小さな水色の花がたくさん咲く花壇。
汐里の母が学校の先生に掛け合い、花壇を作ることにしたのだ。
花の世話も、当番として生徒みんなで協力していくことになった。
もちろん、あのやんちゃな男の子達もだ。
今日は汐里達の班の初めての当番。
汐里が水がたっぷり入ったジョウロをよたよたしながら運んでいると、ムスッとした顔つきで近寄る旺次郎。
やんちゃな男の子軍団のリーダー格だ。
そして、汐里を突き飛ばした張本人。
坊主頭で眉毛はいつもキリッとしている。
びくっと汐里は立ち止まる。
「貸して」
ぶっきらぼうに汐里の手からジョウロを奪う。
がに股で歩きながら、せっせっと花壇に水をやり始める。
汐里は目をパチクリさせた。
また何か文句や罵声を浴びせられるかと身構えていたので、まさかの状況にピンと来ない。