528ヘルツの奇跡
 そんな事をぐるぐる考えていたら、先生が言った。

「朔間、表彰式が終わったら帰ったんだが、これから陸上部に入るって言ってたぞ」

 何がきっかけになったのかは分からない。あんなに悩んでいたのに。

 でも、蒼太くんはまた陸上をやる事に決めたんだ!

 それが自分の事のように嬉しい。

 すぐに蒼太くんを追って学校へ行こうと思ったけど、やっぱりそれはやめた。なんだかそうしてはいけない気がした。

 きっと蒼太くんなら、一人で陸上が大好きって事を確かめたいと思うから。ぎゅうっと心に抱きしめたいと思うから。

 それをじゃましたくなかったんだ。

 だから私は今朝早めに学校へ行く事にした。陸上部が毎日朝練をやってるのは知ってたから。

 お母さんに朝ご飯を早くしてもらって、支度も急いだ。その甲斐あって、朝ご飯を食べたらすぐに出発することが出来た。

 学校まではいつも、ゆっくり歩いて十五分くらい。でも今日は全力で走った。途中で息が切れてしまったけれど、頑張って走った。

 少しでも早く、蒼太くんに会いたかった。

 学校に着くと、グラウンドへ向かった。陸上部が朝練やってるとしたらそこだから。

 グラウンドは幾つかの部が活動していて、早朝なのに賑やかだった。私は部活やってないから知らなかったけど、こんな朝早くにみんな頑張ってるんだ。

 グラウンドをぐるりと見渡すと、陸上部はトラックを使って練習しているみたいだった。周回している団体、その先頭を蒼太くんが走っていた。

 力強いフォームで、地面を踏みしめグンと伸びてゆく足。後ろを走る人たちをどんどん引き離していく。風に流れる髪、朝日に光る汗。それが眩しくて思わず目を細めた。

 楽しそうに走る蒼太くんの姿が、とても、とても綺麗だと思った。

 近くへ歩いて行くと、蒼太くんは私にすぐ気がついてくれた。そして、ニッと笑った。それに心臓がドキリと音をたてる。

 すぐ側をビュッと走り抜けて行った蒼太くんの背中。それを、私はずっとずっと見つめていた。





◇◇◇終
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