女神は天秤を傾ける
32 激昂
「さて、聞かせろ、なぜなんだ」
ふたりきりになった部屋の中は、相変わらず空気が重い。
いや、圧が強いのはモアディさまだから気持ち少し負担は減った。
「これからいうことを、信じてくれますか?」
「それは断言できない。聞いてから判断する」
一応かけた保険だけど、きっぱりと断られてしまった。
まだ想定内。
半信半疑になるのは当たり前のこと。
「夢を、みたんです」
「はぁっ!?」
私の発言に、驚いてしまったのかどこから出たの? という感じの声のひっくり返りかただった。
「子供の時から、夢に見たことが当たる経験があります」
「お前……聖女かなんかか?」
腕組を崩さず、しばらく考え込んだ後にイリはそう言った。
「聖女? いやいや、そんなすごい人物ではないです」
聖女って、教会で保護しなきゃならないような、神と通ずる奇跡を起こす人でしょ?
私はそんな偉大な人じゃない。
手を振って、身振りで違うと否定した。
はっきり言ってしまえば「死人」が近い。
「恐れ多いです」
謙遜した私を、イリはふんと鼻で笑った。
「では、その夢の話を信じることはできないな」
「ですよね、でも、信じてもらえるかもしれない話をいまからします」
時折聞こえていた、ダーリアさまの叫び。
誤解だと、誰かの策略だと、そんな叫びも聞こえていた。
その中に、私たち貴族でも知らないことがあったのだけど。
「王子は二人じゃない、王さまは異国のかたとも……」
「お前!」
「痛っ……」
イリがいきなりとびかかるように来て、私の肩を掴み壁に押し当てた。
すごい勢いだったから、私は背中を打ち付けた。
「なんで知ってる! お前は誰だっ」
びりびりと、イリの大きな声が鼓膜を震わす。
「痛い、離して……」
お願いしたけど、私を壁に押し付ける力は弱まらない。
この取り乱し、逆にそれは本当だと示したも同じでしょう。
「だ、だから夢に……」
苦しい。
腕が首に当たって、息が上手くできない。
なぜこんなにイリは激昂したの?
『私は騙されたんだ』
『私が優秀で邪魔だったのだな』
『国を売ろうとなんてしていない』
『王は病的に女好きだからなぁ』
ダーリアさまの叫び、は数あったけれど、錯乱していると笑われているだけだった。
でもあれが本当である可能性だってある。
まだ公表されていない、王の子がいてもおかしくない。
何度も何度も聞こえていたから、私が洗脳されている可能性もあるけどね。
でもこのイリで確信したわ。
私の予測通りのことが城内で起こった。
「く…、くるし……」
「言えよ。誰に聞いたことだ? 貴族での『噂話』ってやつか?」
額にイリの額が触れるほど近い。
凄い圧だった。
さすがに護衛業やっているだけある腕力ね。
私、もう足が床についていないわ。
「どこから漏れ出た話だ?」
「ち、ちが……」
カチャリと、イリの腰の剣の音が響いた。
柄を握ったんだ。
私、殺されるかもしれないわ。
いま。
あの冷たい刃の感覚が蘇って、目をぎゅっとつむった。
怖い。怖い。怖い。
死にたくない!
口をわらないと、イリに斬りつけられるかもしれない。
どうしたって、私の首は斬り落とされてしまうの!?
ふたりきりになった部屋の中は、相変わらず空気が重い。
いや、圧が強いのはモアディさまだから気持ち少し負担は減った。
「これからいうことを、信じてくれますか?」
「それは断言できない。聞いてから判断する」
一応かけた保険だけど、きっぱりと断られてしまった。
まだ想定内。
半信半疑になるのは当たり前のこと。
「夢を、みたんです」
「はぁっ!?」
私の発言に、驚いてしまったのかどこから出たの? という感じの声のひっくり返りかただった。
「子供の時から、夢に見たことが当たる経験があります」
「お前……聖女かなんかか?」
腕組を崩さず、しばらく考え込んだ後にイリはそう言った。
「聖女? いやいや、そんなすごい人物ではないです」
聖女って、教会で保護しなきゃならないような、神と通ずる奇跡を起こす人でしょ?
私はそんな偉大な人じゃない。
手を振って、身振りで違うと否定した。
はっきり言ってしまえば「死人」が近い。
「恐れ多いです」
謙遜した私を、イリはふんと鼻で笑った。
「では、その夢の話を信じることはできないな」
「ですよね、でも、信じてもらえるかもしれない話をいまからします」
時折聞こえていた、ダーリアさまの叫び。
誤解だと、誰かの策略だと、そんな叫びも聞こえていた。
その中に、私たち貴族でも知らないことがあったのだけど。
「王子は二人じゃない、王さまは異国のかたとも……」
「お前!」
「痛っ……」
イリがいきなりとびかかるように来て、私の肩を掴み壁に押し当てた。
すごい勢いだったから、私は背中を打ち付けた。
「なんで知ってる! お前は誰だっ」
びりびりと、イリの大きな声が鼓膜を震わす。
「痛い、離して……」
お願いしたけど、私を壁に押し付ける力は弱まらない。
この取り乱し、逆にそれは本当だと示したも同じでしょう。
「だ、だから夢に……」
苦しい。
腕が首に当たって、息が上手くできない。
なぜこんなにイリは激昂したの?
『私は騙されたんだ』
『私が優秀で邪魔だったのだな』
『国を売ろうとなんてしていない』
『王は病的に女好きだからなぁ』
ダーリアさまの叫び、は数あったけれど、錯乱していると笑われているだけだった。
でもあれが本当である可能性だってある。
まだ公表されていない、王の子がいてもおかしくない。
何度も何度も聞こえていたから、私が洗脳されている可能性もあるけどね。
でもこのイリで確信したわ。
私の予測通りのことが城内で起こった。
「く…、くるし……」
「言えよ。誰に聞いたことだ? 貴族での『噂話』ってやつか?」
額にイリの額が触れるほど近い。
凄い圧だった。
さすがに護衛業やっているだけある腕力ね。
私、もう足が床についていないわ。
「どこから漏れ出た話だ?」
「ち、ちが……」
カチャリと、イリの腰の剣の音が響いた。
柄を握ったんだ。
私、殺されるかもしれないわ。
いま。
あの冷たい刃の感覚が蘇って、目をぎゅっとつむった。
怖い。怖い。怖い。
死にたくない!
口をわらないと、イリに斬りつけられるかもしれない。
どうしたって、私の首は斬り落とされてしまうの!?