〜Midnight Eden〜 episode4.【月影】
あとがき(読みたい人だけどうぞ〜✧)

【episode4.月影】は起承転結の二つ目の転の物語。転がり堕ちて行く意味の〈転〉です。
【月影】にはいくつかシリーズの核心に迫るポイントがありました。
まずは【episode2.蛍狩】で吉田という偽名で登場した雨宮と舞の血縁関係、明かされた舞の出生の秘密。
吉田=雨宮はミステリーでは定番の一人二役です。
姪と肉体関係を持ちながら姪との行為動画を実の父親に送りつける雨宮は外道野郎です。雨宮が大切なのは妹の紫音であって、舞ではないのね。
ep2【蛍狩】で吉田(雨宮)を初登場させたのも、あの話が身代わりがキーポイントとなる物語だったからです。雨宮は死んだ妹の身代わりに妹の娘(姪)を利用していました。
雨宮が向ける紫音への歪んだ愛と、夏木と紫音の不倫関係によって産まれた舞。
前回【episode3.夏霞】に登場した夏木の妻、朋子が愁に言った言葉を覚えているでしょうか?
「舞だけは今もどうにも好きにはなれない」
なぜ朋子は舞が好きになれないのか?
なぜ愁は10年前に伶の父親の明智を殺したのか?
なぜ伶と舞を夏木十蔵が養子に引き取ったのか?
すべての答えは舞が夏木十蔵の血の繋がった娘だったからです。
夏木にしてみれば、不倫とは言え愛していた紫音に暴力をふるっていた明智が許せなかったんですね。
愁は夏木専属の殺し屋〈ジョーカー〉ですから夏木の命令通り、10年前の春雷の夜に明智と後妻を撃ち殺しました。その時に出会ったのが小学生だった伶です。
(【episode0.片翼《かたよく》】参照)
伶の父親は明智なので伶と舞は異父兄妹になります。
伶は舞と夏木十蔵の本当の関係を知りません。自分の母親が夏木と不倫関係にあったことも知りません。
私はどんなキャラクターも自分が生み出したキャラには程度はあっても愛着がありますが、(あ、夏木十蔵と雨宮冬悟の二人は無理でした。あのおっさん達には愛着ゼロ)
舞は読者さんに嫌われている気がします。ワガママで世間知らずで、同級生の雪枝のこともいじめてるし、好きになれる要素ないよね……。
でも伶も舞も善良とは言えないキャラクターですが、親世代が好き勝手やった結果の被害者でした。
愁がどうしてここまでして舞を守っているのか……。
勘の良い読者さんは、これまでに仕込まれた数々の伏線でお気付きだとは思いますが、その理由は次の物語で明かされますので、次回をお楽しみにっ!
伏線と言えば、本作の事件パートメインとなるアイドルグループ、フルリールもこれまでの物語でその名称がたびたび登場しています。
ep2【蛍狩】登場人物の西村光がフルリールの及川果林のインスタグラムを閲覧する場面や、ep3【夏霞】では芹沢小夏がエイジェントに殺される直前までイヤホンで視聴していた音楽がフルリールの曲でした。
芸能界も絡む話のため、前作の【早河シリーズ】の読者さまには馴染み深~いロックバンドやピアニストや女優さんの名前も出てきましたね。
2018年もUN-SWAYEDは恐ろしい売り上げを叩き出しています。
Act3の章タイトルにもなっている彼らの新曲〈月夜の原罪〉のサウンドイメージはミディアムバラード。アダム(愁)とイブ(美夜)の禁断の恋っぽい歌です。
“あの”人見知りの海斗が後輩の世話焼いてます。本作の唯一の救いは、咲希がUN-SWAYEDと同じ芸能事務所エスポワールに移籍できたことですね。咲希だけは守れて良かった。
シリアスミステリーシリーズの【Midnight Eden】とUN-SWAYEDが主役の逆ハーレム同居ラブストーリーの【Quintet】、世界観が真逆の二つの物語がこうして繋がるのも不思議です。