距離感ゼロ 〜副社長と私の恋の攻防戦〜
「まじで、地獄を見た」
ランチを終えて秘書室に帰って来ると、村尾はぐったりとデスクに突っ伏す。
井口は専務の会議に同席する為、すぐに部屋を出て行った。
芹奈は視察のスケジュールを話し合おうと、隣のデスクの村尾に椅子を寄せたが、村尾は突っ伏したままだ。
「俺、もう、無理。ピクリとも動けない」
「そんなこと言わないで。ほら、一緒に考えようよ」
「芹奈、一人で考えてくれ」
「えー、どうしちゃったのよ?もう」
「頼む。俺にはその権利が充分あるはずだ」
「何それ?仕方ないなあ」
芹奈はパソコンを開いて、資料を見ながらカタカタと入力していく。
すると向かいの席から菜緒が身を乗り出してきた。
「ね、芹奈さん。副社長のあのセリフ、どういう意味だったんですか?」
「あのセリフって?」
「ほら、ダイヤのネックレスがどうとか」
ああ、と芹奈は手を止めて顔を上げた。
「どうってことないよ。ほら、菜緒ちゃんも知ってるでしょ?私が両親からもらったこのネックレスをパーティーの時に置き忘れて、たまたま副社長が気づいて渡してくれたっていう。あの時の話よ」
「じゃあ、どうしてあんな思わせぶりな言い方を?」
「んー、あれじゃない?小学生の、いーれーてーってやつ」
「は?なんですか、それ」
「だってあの時井口くんが、副社長は雲の上の存在だ、とか、秘書室のみんなで賑やかにやってます、みたいに言ったでしょ?それで副社長、拗ねちゃったんじゃない?なんかほら、仲間外れにされた、みたいな。だから私とはしゃべったことあるぞ、っていうエピソードを披露してみた、とか」
それを聞いて、いきなりガバッと村尾が顔を上げる。
「わっ、びっくりした。どうしたの?村尾くん」
「芹奈。お前、今の話、本気で言ってる?」
「ん?もちろん」
バッターン!と再び村尾はデスクに倒れ込んだ。
「うわ、痛そうな音したけど、大丈夫?村尾くん。顔ぶつけたんじゃない?」
「頼む、そっと、しておいて、くれ」
「う、うん。分かった。お大事にね」
芹奈は菜緒と顔を見合わせて首をひねると、またパソコン作業に集中した。
ランチを終えて秘書室に帰って来ると、村尾はぐったりとデスクに突っ伏す。
井口は専務の会議に同席する為、すぐに部屋を出て行った。
芹奈は視察のスケジュールを話し合おうと、隣のデスクの村尾に椅子を寄せたが、村尾は突っ伏したままだ。
「俺、もう、無理。ピクリとも動けない」
「そんなこと言わないで。ほら、一緒に考えようよ」
「芹奈、一人で考えてくれ」
「えー、どうしちゃったのよ?もう」
「頼む。俺にはその権利が充分あるはずだ」
「何それ?仕方ないなあ」
芹奈はパソコンを開いて、資料を見ながらカタカタと入力していく。
すると向かいの席から菜緒が身を乗り出してきた。
「ね、芹奈さん。副社長のあのセリフ、どういう意味だったんですか?」
「あのセリフって?」
「ほら、ダイヤのネックレスがどうとか」
ああ、と芹奈は手を止めて顔を上げた。
「どうってことないよ。ほら、菜緒ちゃんも知ってるでしょ?私が両親からもらったこのネックレスをパーティーの時に置き忘れて、たまたま副社長が気づいて渡してくれたっていう。あの時の話よ」
「じゃあ、どうしてあんな思わせぶりな言い方を?」
「んー、あれじゃない?小学生の、いーれーてーってやつ」
「は?なんですか、それ」
「だってあの時井口くんが、副社長は雲の上の存在だ、とか、秘書室のみんなで賑やかにやってます、みたいに言ったでしょ?それで副社長、拗ねちゃったんじゃない?なんかほら、仲間外れにされた、みたいな。だから私とはしゃべったことあるぞ、っていうエピソードを披露してみた、とか」
それを聞いて、いきなりガバッと村尾が顔を上げる。
「わっ、びっくりした。どうしたの?村尾くん」
「芹奈。お前、今の話、本気で言ってる?」
「ん?もちろん」
バッターン!と再び村尾はデスクに倒れ込んだ。
「うわ、痛そうな音したけど、大丈夫?村尾くん。顔ぶつけたんじゃない?」
「頼む、そっと、しておいて、くれ」
「う、うん。分かった。お大事にね」
芹奈は菜緒と顔を見合わせて首をひねると、またパソコン作業に集中した。