距離感ゼロ 〜副社長と私の恋の攻防戦〜
「わあ、このおうち素敵!天井が高くてリビングも広いし、ウッドデッキもある!いいなー、ここ。ガーデンチェアを置いてお昼寝したい。ね?」

モデルハウスを回っているうちにテンションが上がってきた芹奈が、目を輝かせて翔を振り返る。

「うん、いいね。ハンモックでも良さそうだな」
「ハンモック!さすがアメリカン。じゃあ、ロッキングチェアは?」
「それはおばあちゃんだろ?」
「あはは!編み物しながらユラユラってね」

楽しそうな芹奈の笑顔に、翔も頬を緩める。
何より、ずっと芹奈が腕を組んでくれているのが嬉しくて仕方ない。

「ね、2階も見に行こう!」

そう言うと芹奈は階段の下まで行き、1度腕を解くと、今度は翔の手を握ってトントンと階段を上がり始めた。

繋いだ手をじっと見つめて、翔は顔を赤くする。

「たくさんお部屋がある!ここは子ども部屋かな?家具が可愛い」

繋がれた手にばかり意識がいき、もはや翔は芹奈の言葉が頭に入ってこない。

「この壁、可動式みたい。子どもが大きくなったら仕切りで個室に出来るんだって」

すると同じように見学していた若い夫婦が頷いた。

「いいですよね、これ。子どもの人数とか性別って、今はまだ分からないし」

奥さんに話しかけられて、芹奈もにこやかに答える。

「ええ。ライフスタイルに合わせて部屋を増やせるなんて、いいアイデアですよね」
「本当に。モデルハウスって、見てるだけでワクワクしちゃう」
「分かります。夢が膨らみますよね」
「新婚さんですか?私達はもうすぐ1年経つんですけど」
「いえ、結婚はこれからなんです」

ピクッと翔は繋いだ手に力を入れてしまった。

それじゃあ、と夫婦と別れると、芹奈は翔の顔を覗き込む。

「ごめんなさい。結婚はこれから、なんて嘘をついてしまって……」

ブルブルと翔は急いで首を振った。

「全然構わない。むしろありがとう」

ありがとう?と、芹奈はキョトンとする。

「そんなにお芝居上手でしたか?私」
「うん、もう、最高!」
「はあ……。それなら良かったですけど」

そう言って芹奈は翔と手を繋いだまま歩き出す。

「でもあのご夫婦の意見も参考になりましたね。子どもの成長に合わせて間取りを変えられるって、やっぱり魅力的なんですね」
「うん。俺は子どもは3人は欲しいな」
「は?ああ、お芝居ですか」
「芹奈は?」
「うーん、私も3人かな」
「気が合うなー。じゃあ、そうしような」

にっこにこの笑顔を浮かべる翔に、芹奈は眉根を寄せて訝しんだ。
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