落ちこぼれ悪魔の扱い方
美弥はしばらく思案し、「黒輪(くろわ)、なんてどうかな」と言った。

「くろわ? なんだそれ、どういう意味だよ。何か由来とかあんの?」

どこか期待している様子の悪魔を裏切るように、美弥は軽く告げた。

「黒い輪っかと書いて、黒輪さん。クロワッサン、なんつって」

美弥は「深い意味があると思った?」と挑発的に微笑む。


悪魔は呆気にとられたように沈黙していたが、力なくぼそりと呟いた。

「……別のにしてくれ」

「じゃあ稲荷(いなり)って名前で、おいなりさ……」

「好きに呼べとは言ったが、ふざけすぎだろ」

不機嫌になった悪魔を見て、美弥は笑いながら「ごめんね」と謝る。

「それならえーっと、与崎(よざき)、とか」

「よざき?」

悪魔は不審そうだった。

彼の疑念を察し、美弥は「今回は真面目に考えたよ」と恩着せがましく言った。

「与えるに長崎の崎で、与崎。なんとなく思いついた名前なんだけど、どう?」

「与崎、ねえ……」

お気に召してもらえるだろうか。

飄々とした態度を取り繕いつつ、美弥は内心ドキドキしていた。
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